コダモンです。(@kodamon)
今この記事を書いている時点では、世界はCovid-19(新型コロナウィルス)による危機の真っ只中。(2020年4月6日時点)
ドイツでサラリーマンをしている自分は、もうかれこれ1ヶ月以上”Home Office”をしています。
いわゆる在宅勤務
現在勤めているドイツ系のグローバル企業では、ドイツ国内の社員はほぼ全員在宅勤務を命じられている。
しかし…。
日本では、危機的状況にもかかわらず会社に行く人が多いらしい。
在宅勤務が推奨される中、なぜこのような状況が発生しているのでしょうか?
日本のテレワーク実施割合はとても低い!
そもそも、『テレワーク』とは何でしょう?
テレワークとは、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。※「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語です。
(日本テレワーク協会,テレワークとは,2020年4月時点)
厳密に言えば、テレワークは自宅利用型の他にもサテライトオフィスやモバイルワークなども含みますが、ここでは『在宅勤務』がテーマ。
テレワークは、海外では『ホームオフィス』や『リモートワーク』などとも呼ばれます。雇用契約書に在宅勤務の選択肢が正式に盛り込まれている会社員もいる。
ドイツでは、普段から在宅勤務をしている人がけっこういます。
日本では馴染みが少ない
国土交通書の「テレワーク人口実態調査結果」によると、今回の新型コロナウィルス感染症対策の一環として行われたテレワークの実施状況は次の通り:
(令和2年3月31日時点)
要するに、こういう事です:
- 既に会社にテレワーク制度がある会社でも実施割合はたったの半分!
- テレワークの制度がない会社で実施対象になった人はおよそ7人に1人!
これはヤバい…
ソーシャルディスタンスが必要な危機的状況でも、テレワーク制度がある会社ですら半分以上の会社員が出社しているという事です。
それ以外の会社は、実施割合がさらに低い。
…なぜ?
都内の満員電車や狭いオフィスでは、一定の間隔を開ける事はほぼ不可能。感染のリスクがとても高いのに、ほとんどの会社員が会社での仕事を余儀なくされています。
学校の閉鎖なども大切ですが、まずは働く人をテレワークで優先的に『隔離』させるべきだと思うのは気のせい?
気のせいか…
何はともあれ、新型コロナウィルスの感染拡大が続く中、世界中で在宅勤務の必要性が叫ばれている。
それなのに…日本の働く環境はなぜかズレているのです。
日本でテレワークはなぜ『問題視』されるのか?
そもそも、なぜ日本ではテレワークの実施割合が低いのでしょうか?
その主な原因は2つ考えられます。
まず1つ目は、日本社会には在宅勤務というシステム自体が浸透していないという事。
「多様な働き方の実現」というのは働き方改革の重要な柱ですが、具体的に施行されている職場は少ないです。総務省の調査によると、2017年の在宅勤務導入企業における導入率はおよそ30%ほど。その制度すら導入していない企業が大半であり、実施割合はとても低い。
(総務省,テレワークの導入と課題について,2020年4月時点)
『テレワーク』の存在やその単語すら知らなかった人もいるでしょう。
日本ではそもそも馴染みが少ない制度のため、いざという時に選択肢すら知らない人がいるのです。
2つ目の原因は、日本企業の根本的な『働き方』。
日本で会社員をしていると…。
「始業時間は厳守!」
「外出先からは必ず帰社!」
そのようなルールや慣行がやたらと存在し、日本企業はそもそも社員を会社に拘束するのが得意です。
上手に囲い込む
作業の効率や生産性は無視で、「ウチのルールだから」「みんなやってるから」などの理由で社員を会社につなぎとめます。
日本企業は『在宅勤務』に消極的です。いまだに紙の書類で押印リレーをする会社も多く、社員が会社にいないと「仕事がまわらない」と考える企業や上司が多い。同時に、世の中には「会社員は会社にいるもの!」という認識があり、自宅から働く人に対する理解も少ない。在宅勤務には様々な不安がつきまとうのです。
また、日本企業は病欠などにも社員の大切な有給休暇を消費させるほど『社員を簡単には休ませない』という事が徹底されています。
例えば、ドイツなどは医師の診断書があれば3日まで会社を休めるため、ドイツ人の根底意識には「会社は休んでもいいもの」という一定の認識があります。
しかし…日本には当然そのような制度はない。
そのため、日本の会社員はそもそも平常時から『会社を休むこと』に対する免疫がない。そして…。
「会社を休んだらヤバい…」
「会社は絶対に休めない…」
誰もがそのように考え、休みたい時に休めないまま…身を粉にして働いています。
ストレスたんまり
日本でテレワークが問題視される理由は、日本人の『働き方』にも起因する。
「何が何でも会社を休まない!」そのように考えて働く社会人の意識の中にあります。
『働く過程』が大事な日本で在宅勤務は無理?
企業が社員に在宅勤務を『させたくない理由』も考えられます。
実際に日本の大手企業に4年半ほど勤務していましたが、日本人はとにかく『働く過程』を重要視します。
プロセスが大事
海外の企業は成果主義であり、基本的には社員が結果さえ出せていれば上司はその『働き方』には口を出しません。残業するかしないか…などは個人の裁量に委ねられます。
現在勤めているドイツ企業では、残業をする・しないは自己判断。担当する仕事の進め方は個人に委ねられます。海外企業では人事権がライン長などの上司にあるので、上司を満足させるアウトプットさえあれば『働き方』は自由。結果的に社員は自発的に『定時退社』や『休暇取得』のために効率良く働くようになり、お互いに足を引っ張り合うような同調圧力はありません。
そんな海外企業と事情が違うのが、日本企業。
日本の職場は良くも悪くも『仕組み』でまわっているので、ガチガチのルールやマナーが多い。働くプロセスがとても重要視される企業文化です。
- 細かすぎる『報連相』の追求と習慣
- 職場の人間関係と和を大切にして『みんなで頑張る』働き方
- 残業している人が「頑張っている!」という間違った認識
日本でありがちなこれらの働き方や思考は、欧米諸国にはありません。
そして、これらが日本で在宅勤務が浸透しない根本的な理由でもあります。
要するに、部下に在宅勤務をさせてしまうと『働く過程』が見えなくなってしまう。
在宅勤務をすると、管理が行き届かなくなると勘違いしているのです。
仕事のあり方の問題
日本では「オフィスにいない従業員をどう管理すればいいの?」という心配が先行するようですが…。本来は、仕事に結果さえ伴っていれば何も問題はない。
それなのに、在宅勤務で社員の働き方が見えなくなると、『これまでの会社の常識』でしか物事を考えられない経営陣や上司が浮き足立つのです。
「部下が会社にいないと管理できない!」そう考える管理職もたくさんいる。
『働く過程』が見えず不安
何はともあれ、日本企業の多くは平時から在宅勤務を想定していないため、リモートワークに必須である『社外からのデータアクセス』『ビデオ会議ツール』『情報漏洩対策』などのインフラが整っていない。
人事規則など制度に関する部分でも整備がされておらず、在宅勤務をさせたくても「システム上不可!」という会社も多いでしょう。
結果的に、今回のような緊急事態でも「ウチの会社は在宅勤務をさせてくれない!」という会社員の悲鳴が聞こえて来るのです。
ドイツは過半数がテレワークを実施
冒頭でも言いましたが、ドイツでは現在大部分の会社員が在宅勤務をしています。
(Statista,Deutschland geht ins Home-Office,2020年4月時点)
ドイツでサラリーマンをしている自分は営業職なのですが、家から働いています。
顧客訪問は、現時点では国内も国外も全てNG。通常業務や社内の打ち合わせは電話とビデオ会議で済ませています。
リモートワーク
「納期は絶対に守る!」「お客様は神様だ!」そのような風潮はドイツにありませんが、もちろん取引先とのビジネスは大切です。
それでも、今回のような非常事態においては、ドイツ企業は社員に対して問答無用で在宅勤務をさせています。
安心の対応
ドイツと日本を比較しても仕方ないのかもしれませんが、今回のような緊急事態にこそ、会社という組織の本質も見えてきます。働く身からすれば、会社に『社員ファースト』で対応して欲しいと願うのは当然です。
だからこそ、「会社がテレワークをさせてくれない!」という声が多い日本の状況には疑問が残るのです。
パンデミックで浮き彫りになった労働事情の闇
今回の件で、日本の働き方にはそれなりの変化があるようです。
これまで認知度の低かった『テレワーク』という選択肢が議論され、新型コロナウィルスの対応として在宅勤務は広がりを見せている。
良い傾向
それでも、日本の状況とドイツとのギャップには違和感を感じます。
「ドイツと一緒にすんな!」そのような声も聞こえてきそうですが、両方の国でサラリーマンを経験した身からすれば、今回のパンデミックで『日本の働き方の闇』が浮き彫りになったように見える。
ソーシャルディスタンスが確保できない事によう健康面への不安だけでなく、家事育児との両立や収入面の不透明さなど『働く人の不安』は絶えません。
「テレワークで残業代が出なくなる!?」
そのような声もあるようですが、もちろん在宅勤務でも残業代は出ます。しかし実際は、在宅勤務者の勤怠管理システムなど企業側の規定の準備が追いついていないというケースもある。
急務なのに
世界規模で経済に大きな影響が出ている中、一過性の対策ではなく、将来的にウィルスの脅威が過ぎ去っても維持できる『柔軟な働き方』の実現が必要です。
今回のことを教訓に、持続的な働き方の見直しが行われることを願っています。
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