コダモンです。(@kodamon)
日本の大手企業でサラリーマンをしていた時のこと。
年末年始の休み明けで、その年初出社となった部署の集まりでの出来事です。
部長が突然こんな事を言いました:
「いや〜休みが長いと仕事のリズムが崩れて逆に疲れるんだよなぁ…」
会社では毎日毎日残業して、有給すらロクに取らず働いていたその部長サン。
新卒から生え抜きで20数年ほどブっ続けで会社に尽くしてきたその人は、はたから見ていても明らかに過労。
そのため、たまの長期休暇はゆっくりリフレッシュをするのだと思ってた。
それなのに…。
「仕事をしていないと逆に疲れる」という発言。
辛い仕事や長時間労働で心身を消耗するからこそ『休み』が必要なはずなのに。
ちょっと理解不能
ちなみにその会社は4年半で辞めました。今はドイツでのんびりサラリーマンをしています。
そんな中、つい最近ひょんな事がキッカケで当時の部長サンの言葉を思い出しました。
年末年始の休みが延長に?
キッカケとなったのは、このニュース:
年末年始1月11日まで休暇延長を要請へ 新型コロナ政府分化会
(NHKニュース,年末年始1月11日まで休暇延長を要請へ,2020年10月時点)
どうやら、政府は年末年始の帰省や旅行を分散させるために来年の2021年は1月11日まで休暇を延長することを企業側に要請するらしい。
これは新型コロナウィルス対策で、いわゆる感染防止策の一環とのこと。
ドイツハーフがこの記事を読んだ時の反応は単純に「いいじゃん!」でした。
コロナ対策うんぬんよりも、「休みが増えるのいいじゃん!」という率直な感想。
(Expedia,世界19ヵ国 有給休暇・国際比較調査2018,2020年10月時点)
自分も実際に日本企業で経験したけれど、日本でサラリーマンをする事は休みがいくらあっても足りないほど疲れる。
休日出勤だってあるし、「家に帰ったら食事して寝るだけ」と言うほど残業ばかりしている人も大勢います。当時の自分も例外ではなく。
長時間労働が多い
ドイツハーフが耐えられなくなって辞めたのも『長時間労働』と『休めない職場環境』が主な原因。
それを経験しているからこそ、今回のニュースを見て「ゆっくり休めるのいいじゃん!!」と素直に思ったわけです。
しかし…。
どうやらこの『休暇延長』が意外な議論を呼んでいるようなのです。
休暇が延期になって休みが増えると困る!?
今回のニュースを別のメディアで検索してみて、ドイツハーフは愕然としました。
そこに寄せられた多くのコメントが批判的な内容だったからです。
「何を基準に日程を決めた?休めない職業もある」
「国の官公庁は? 想像するだけで混乱が起きそう」
「休みなしで粛々と日常を過ごした方がいい」
「休める人は有給休暇を取れば良いだけだと思う」
などなどなど。
批判のオンパレード
その中には「保証がなければ意味がない」「日雇いは働かなければ給料が減る」などの真っ当な意見もあり、もちろん一概には言えません。
けれど…。
なぜこんなに「急に休めと言われても困る!」という意見が多いのか?
会社員の多くは普段から残業が多く「休みたい時に休めない」などの不満が溜まっていると想像します。少なくとも、当時の自分であれば今回のニュースはウェルカムだったはず。
ガッツポーズ
しかし…。
フタを開けてみれば、世間は必ずしも今回の休暇延長を快く受け入れているわけではない様子なのです。
「2週間も休むのは非現実的」「業績悪化につながる」「主婦はさらに家事が増えて大変」などの意見もあり、実際に休む前から既に多方面でザワついています。
『休むこと』に慣れてない
各々理由はあるのでしょうが、「いざ休める」となった途端にネガティブな意見が多く見受けられる。
そんな状況を目の当たりにして、当時勤めていた日本企業の事を思い出しました。
そして、冒頭の部長サンの言葉を思い起こしたわけです。
仕事以外にやる事がない人
今はコロナ禍という事もあり、世界中の人々はそもそも『自粛疲れ』しています。
働く人の中には『在宅勤務疲れ』を感じてる人もいるかもしれません。
結局のところ、今回の「年末年始は休みが増える!」という政府方針が決まったところで先を見通せない不安がそのまま『不満』につながっているのだと想像します。
それはわかる
それでも、今回の報道に対する巷(ちまた)の反応に違和感を感じました。
「いきなり休めと言われても困る!」「ウチの会社は絶対に休めない!」そのような反応は、会社以外にやる事がない人を連想させたからです。
これが冒頭の部長サンの言葉にも絡んでくるわけですが、休む事を知らないベテラン社員は当時みんな毎日残業して休日にもメールを書いていました。
飲みに行ってもすぐ仕事の話になるし、アフターファイブは完全に仕事の延長。
そのような人達からは「仕事が大好き!」というよりも「仕事をしていないと他にやる事がない」という印象を強く受けました。
家族より仕事優先?
当時の上司の中には耳を疑うような発言をする人もいました。
「残業しないと逆にヒマ」
「こんなに早く帰宅しても家で何していいかわからない」
長時間労働が体に染み付いた会社の人間にとっては残業がデフォルト。会社の常識や職場の同調圧力を経験しながら日本の社会人を粛々と続けた結果、自分自身よりも家族よりも「仕事第一!」といった働き方をするようになるのです。
そしてそれは、冒頭で紹介した部長もしかり。
「休むと仕事が溜まるから休まない方が良い」
「仕事を長期休むと感覚が鈍るから逆に面倒くさい」
そのような愚痴にも似た意見が出るのは、マジで理解できない。
本来であれば趣味や余暇の時間が増えたり、家族と過ごす時間が増えることはウェルカムなはず。
日頃からロクに有給休暇も取れずストレスを抱えながら働いているのに、いざ「休んでいいよ」となっても手放しで喜べない人が多いという現実。
そこに強烈な違和感を感じたのです。
どこへ向かう?今後の日本の働き方
日本で働き方改革が叫ばれるようになってすでに数年が経過しています。
そこに突如として発生した新型コロナウィルスの脅威ですが、それによりリモートワークを導入する企業が増えるなど日本の働き方は変化しています。
パンデミックが無ければ訪れなかった大きな変化が、今確実に起きているのです。
働き方は変わりそう
満員電車のリスクを避けるための時差出勤や在宅勤務など、つい数ヶ月前までは考えられなかったような働き方が実際に行われている。
ただし…。
これが将来的に持続可能な『新しい働き方』かと言えば、それは残念ながらちょっと違う。
事実、緊急事態宣言が過ぎた途端に社員を出社させた会社が多かったと聞きます。
やっぱり変わらないのか…?
日本の会社にありがちな『みんなで苦労して頑張る』『辛いのはみんな一緒』などの精神論は、おそらく今後もなくならない。
むしろ、周囲に同調を求める抑圧的な現象がコロナ禍によってさらに強まったという見方もあります。
「年末年始1月11日まで休暇延長を要請へ」という今回の報道に対する世間の反応がイマイチなのは、日本ではスタンダートとされる『日本独特の働き方』にも起因しています。
結局のところ、いくら政府が年末年始の休暇延長を企業側に要請したところで「物流を止める事はできない」「コンビニも休みなの?」など目先の不安・不満が先行する。
それには一理あるし、今回の要請ではおそらく日本で働く全員が1月11日まで羽を伸ばせるわけではない。それがおそらく事実でしょう。
労働日数の減少による経済損失があるのも、理解できる。
ただし…。それを考慮しても、「ネガティブな反応多過ぎじゃない?」というのが今回の率直な感想です。
日頃から「もっと休みが欲しい!」と嘆く人が多い半面、いざ休めるとなると「それも嫌!」となる。
新型コロナウィルスの流行を食い止めるための今回の休暇延長要請。
それに対する世間の反応を通して、日本の働き方の不思議がまた1つ見える化されました。
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