コダモンです。(@kodamon)
かれこれ3年以上ドイツでサラリーマンをしていますが、ドイツの職場では育児休暇で長期離脱する男性社員が何人もいます。
つい最近、同じ部署の若手男性社員が2ヶ月の育児休暇を取得したばかりです。
その反面、以前4年半ほど勤めていた大手上場企業では育児休暇を取得する男性社員は1人も見かけませんでした。
ほぼ皆無
そんな今回は、男性の育児休暇事情について語ります。
日本の男性の育休取得率はたった6%
日本では男性の育休取得率が低いというのは、既に周知の事実です。
(厚生労働省,平成30年度雇用均等基本調査(速報版),2020年8月時点)
男性の育休取得率自体は6年連続で上昇しており、男性による育休取得は微小ながら年々増えています。
良い傾向
それでも、男性の育休取得率はたった6%。後述しますが、これは欧州諸国などと比べると圧倒的に低い数字です。
しかも…。その『6%の中身』というのが実はかなりお粗末。
日本では、男性による育児休業の取得期間が非常に短期なのです。
男性は「5日未満」が36.3%と最も高く、次いで「5日~2週間未満」35.1%となっており、2週間未満が7割を超えている。
(厚生労働省,事業所調査結果概要,育児・介護休業制度等に関する事項,2020年8月時点)
育休取得が浸透していないのと同時に、仮に育児休暇を取得した場合でもほとんど休んでいないのです。
育休を取得した人の7割以上が『2週間未満』しか休業していない。
かなり短い
日本では「名ばかり育休」という言葉が存在するほど、育児休業をした男性の取得日数が極端に少ない。
子育ての観点からはほとんど意味をなさない、お飾り程度の育児休暇なのです。
日本で男性が育休を取れない理由
結論から言ってしまえば、日本では男性の育休取得のハードルが高い!というのが1番の問題です。
とある調査結果は、次の3点を『男性の育児休業取得の阻害要因』としてあげています:
- 配偶者が専業主婦であったり、育児休業を取得していれば自分が育児休業を取らなくても仕事を継続できる場合が多い
- 無給での育児休業は長期にわたると生計にも支障がでてくる
- 男性の育児休業取得は「特別」なことであると思われており周囲の理解が得にくい。上司に申請するのにも心理的なハードルが高い。
(旭化成株式会社,コラム 男性の育児休業,2020年8月時点)
この中で特に注目したいのは、「周囲の理解が得られない」という点です。
日本では、まだまだ世間一般的に「育児は女性がするもの!」「育休は女性だけが取るもの!」という偏った認識が多く、企業組織においては特に顕著です。
「男は働くもの」?
そして、日本の会社ではそもそも休む事が難しい。
職場によっては残業や長時間労働が常態化している場合が多く「休みたい時に休めない。有給休暇すら取りたい時に取れない」という状況にあり、育児休業などは『もってのほか』。
責任の大きなマネージャーや管理職であれば、なおさらハードルが高く感じられるでしょう。
結果的に、男性社員には育児休業を申請・取得する権利があってもそれをさせない雰囲気があるのです。
仮に育児休暇を取る場合でも、なるべく波風立てないように短期的な休業しか選ばない。
要するに…。
「育休を取ったら周りに迷惑がかかるかも…」
「育休を取ったら出世できないかも…」
世の働く男性は、そのように考えて育休取得を躊躇するわけです。
休みづらい理由がある
育児休業を取得した男性社員に対して不当な異動や降格などの不利益な扱いをするケースも実際にあり、パタハラ(パタニティー・ハラスメントの略)なんて言葉も聞きます。
会社の人事や上司がこのような有様では、理解を得るどころか最初から育休取得を諦めてしまう男性社員は大勢いるでしょう。
「周囲の理解を得にくい」「心理的ハードルが高い」という理由から、育休取得がいつまで経っても浸透しないのです。
ドイツの男性の育休取得率は36%
国が変われば文化も変わり、そこで働く人の意識や習慣も異なります。
それでも、あえて比較してみるとドイツの男性の育休取得率は日本のそれよりも圧倒的に高いです:
(Bundesministerium,Väterreport,2020年8月時点)
ドイツと日本では育休事情や仕組みも異なるため単純比較はできませんが、あえていうならば…。
ドイツの男性の育児休業率が高い背景にはワークライフバランスがあります。
例えばドイツでは、法律によって年間最低24日の有給休暇を社員に付与する事が義務付けられています。そして、多くの企業では30日間の有給休暇が与えられる。
実際にドイツ企業で働いていますが、自分も毎年必ず30日間を全消化します。
休むのが当たり前
上司や経営層も必ず有給を取得するし、社内ではコンプライアンスの観点から有給休暇の未消化が無いよう各職場で厳格に管理・チェックされています。
このように、ドイツ社会では『仕事を休むこと』に対して一定の理解があるのです。
ドイツ企業では上司や同僚が長期休暇に出かけることは日常茶飯事であり、それは取引先も同様です。仕事をしていて「来週から2週間オフになります」などと言われるのは実際によくある事。『休みたい時に休める』『有給を取りたい時に取れる』というのがドイツの職場です。
ワークライフバランスが好まれるドイツでは平均して3割以上の男性社員が中〜長期育児休業しています。育休を取得する男性に対する『冷ややかな目』などもなく、心理的ハードルは低いです。
日本では育児休業する際に『周囲の理解が得にくい』という懸念事項がありますが、それがドイツでは限りなくゼロに近い。
ワークライフバランスを重視するドイツならではの働き方が、育休取得率にもハッキリとあらわれています。
男性がもっと育休取得するために
日本は子育てに関してはまだまだ母親の負担が大きく、育児支援制度を活用するのもほとんどが女性です。
昔からあまり変わらない
管理職のほとんどを男性社員が占める日本企業では、責任の大きな職務に就く男性が長期職場離脱をする事に難色が示されるケースも多いです。
それでも、育児及び育児休暇取得を『女性に丸投げ』するような古い思考や体制は、働き方の多様化が求められるこれからの社会では通用しなくなります。
少子化に歯止めがかからない日本では、子育てをしやすい環境作りが急務なのは紛れもない事実。
そのためには、男性の育児休業の大きな阻害要因である「周りから理解が得られない」という風潮から変えていく必要があります。
男性が育児休業を申請しづらい背景には、日本では「当たり前」と言われる長時間労働や休みづらい職場環境があります。これらが改善されないうちは、育休取得に対する心理的ハードルはいつまで経っても下がらない。
ワークライフバランスのある働き方を実現する事で、ドイツのように成熟した子育て環境の実現へとつながるのです。
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