コダモンです。(@kodamon)
「有給休暇を申請したら休む理由をしつこく聞かれた」
「『繁忙期だから』という理由で休暇申請を却下された」
日本企業で働いていると、そのような声をよく耳します。
「周りと足並みをそろえる」「他人に迷惑をかけない」といったプレッシャーと戦いながら、余暇の確保すらままならずストレスまみれで働く人が多い日本の職場。
でも…それはグローバルスタンダードではない。
日本だけ?
日本とドイツで実際にサラリーマンをしてみたら、日本の『有給休暇事情』のヤバさに改めて気づいたのです。
日本の有給取得率は圧倒的に低い!
日本は、主要先進国の中でも有給休暇の取得日数がダントツに低い国です。
(エクスぺディア・ジャパン,有給休暇国際比較調査2018,2020年3月時点)
有給取得日数も、平均して年間10日。
少ない
毎年のように「日本の有給取得率は世界最下位!」といった記事を目にするように、有給取得率の低さはストレス大国ニッポンの代名詞です。
そんな日本では2019年に有給休暇取得の義務化となりましたが…。会社側が労働者に対して消化させる義務を負うのは、なんと最低5日。
年間を通して5日です。
社員をたった5日だけ休ませることを『義務化』するという発想は…キツイ。
全取得じゃないのか…
何はともあれ、日本の有給休暇の制度は次の通り:
- 勤続6ヵ月で10日間付与
- 入社6ヵ月未満の社員は基本的に有給取得不可
- 勤続年数と共に取得可能日数が増え、6年6ヵ月以上で20日間を付与
さらに、そもそも取得条件として「雇入れから6ヶ月が経過している」「その期間の全労働日の8割以上出勤している」というオマケもある。
国の決まり事にとやかく言う気はないけれど…『休む権利』と『勤続年数』って何の関係があるのだろうか。まさか年功序列ってわけじゃないだろうし。
「長期休暇取る前にまず会社への忠誠心見せろ!」みたいな事なのか…?
ありそう
ただでさえ毎日たくさん残業して集団的にストレスまみれで働いているのに、まとまった休みが取れない。
日本の有給休暇の制度は、なぜここまで『社員を休ませない仕様』になっているのか…?
マジで疑問
(HR performance,2020年4月時点)
さらに、ドイツでは試用期間中であっても有給が取れる。日数に制限はありますが。
日本と違う部分
日本の有給休暇日数の少なさと『年次有給休暇の付与』にまつわる決まり事は…かなり独特。
そして、そのハードルの高さは世界的に見ても普通ではないのです。
有給休暇の取得は『悪』なのか?
「未消化の有給が十何日分も溜まってる」
このような事を自慢気に話す上司が、当時の職場にはたくさんいました。
日本企業には休まず働く事が素晴らしいと考える人がいます。そして、それを実践している会社員がワンサカいる。
同僚も上司もみんな休むことなく働いて、休日にメールを送ってくる輩すらいます。
「身を粉にして働いて会社に貢献する!」そのような働き方が美化されて高く評価される傾向もある。
さらに悪いことに、日本の職場には「自分勝手なことするな!」「職場の和を乱すな!」といった周りからのプレッシャーもある。
そのような風潮は有給休暇の取得にも悪影響を及ぼします。
「上司が有給休暇を取得しないから部下である自分はもっと休めない…」
「部署はみんなお盆休みに一斉に有給を消化するから、自分もそうしなきゃ…」
…といった感じで、就業規則でもないのに当然の権利である有給休暇に勝手に制限をかける人が多いのです。
同調圧力が強い
「自分が休んだら仕事がヤバい…」「○○さんに迷惑がかかる…」などと言って、自分が休むことによって周りに負担がかかることにビクビクしてる。
有給休暇は労働基準法に基づいて労働者に付与されるもので、仕事で疲れた心身をリフレッシュさせてゆとりのある生活を送るためのもの。労働者の『権利』です。その拒絶は労働基準法違反を意味し、罰金の対象になる。有給取得のために上司や職場の理解を得る必要など、本来はないのです。
有給休暇は労働者の当然の権利。それなのに、有給取得が悪い事でもあるかのような雰囲気すらある。
このようにして、日本は見事に有給取得率で最下位になるわけです。
有給休暇を上司に申請する時に、「すみません…お休みをいただきます…」などと言って、周りの目を気にしながら”おそるおそる”申請書を提出するのも日本の特徴。
「有給を使うのは自分勝手!」とでも言わんばかりの、間違った風潮が蔓延しています。
病欠には『有給取得』が日本では当たり前!?
「有給休暇はいざという時のもの!」
こういった理解は、意外と万国共通だったりします。
有給をほぼ全取得するドイツ人も、日常で起こり得る突発的なことに対応できるように、ある程度の日数を残して調整する人が多いです。
しかし…。そんな有給休暇の使い方に関しても日本には異常に厳しいマナーがあります。
例えば『病欠』。
日本では、風邪などの病欠には原則として有給を消化するようになっています。
なぜだろう
このような有給の使い方は、ドイツの職場ではあり得ない。
ドイツでは、医師の診断書があれば3日まで問答無用で休めます。もちろん、有給を消化せずに。
会社や職場によっては、上司に「今日ちょっと具合が悪い…」と伝えれば、その日はテレワーク扱いにして大目に見てくれる事もある。
そんなドイツ人が『いざという時のため』に取っておく有給というのは、冠婚葬祭などです。ドイツ人は病欠に有給を使う気などサラサラありません。
ドイツ人はすぐ休む
その反面、日本ではたとえ半日休むだけでも「有給休暇を申請しろ!」となる。
これに関してはトラウマがあります…。
日系の大手企業に勤務していた当時。
とある金曜日に体調が悪くなり、上司に早退したい旨を伝えました。その時は、ちょっと渋られたものの「有給を申請してから帰れよ」…とすぐに念を押された。
…えっ!?
一瞬面食らったものの、その時は熱もあり早く休みたい一心だったので、言われるがままに半休を申請。
そしてその後…。
数週間後に、またしても具合が悪くなりました。今度も発熱があり、仕事が手につきません。
「また大事な有給を消化するのか…」と気分は落ち込みますが、背に腹は代えられない。上司に申請書を持って体調が悪いことを伝えます。
すると…。思いもよらない一言をかけられたのです。
「お前またか? 前回の早退で味をしめただろ」
ニヤニヤするような、半分怒っているような顔でそう言われたのです。
…what?
ドイツハーフは、その言葉に愕然としました。
自分は本当に具合が悪い。仕事も手につかない。
ただでさえ有給を消化して医者にかかる事が理解できないのに、この上司はさらに追い打ちをかけるように「お前本当に体調悪いの?」と言ってきたのも同然なのです。
さらには…。
「お前が思ってるほど何度も有給は取れないんだぞ?」
そういう強いメッセージを、ダメ押しされたのです。
この経験を通して、日本の職場では病欠でも有給を消化しなければいけない事、会社は社員が病気であっても簡単に休ませない事を知りました。
そして…。
有給休暇を消化しても簡単には休めない!!
…という、三段構えくらいでヤバい『有給事情』を身にしみて経験しました。
『有給休暇を使うのは悪』という風潮をここまで徹底するとは…。とことん社員を休ませたくないらしい。
ちなみに、その日本企業は4年半で辞めました。
遅刻する時は有給を消化
日本には、遅刻した社員に対して年次有給休暇を勝手にカットする会社もあるらしい。
しかし、これは労働者の同意を得なければいけないので本来はアウト。その代わり、日本の職場では遅刻した社員に対して減給などの懲戒処分を科すことができます。労働基準の観点からも、遅刻者に対する減給は可能なのです。
「1分でも遅刻したら罰金3,000円!」そのようなルールを勝手に設けている会社もあるとか無いとか。
あったらコワイ
実際は、そういった罰則よりも遅刻者には有給休暇を消化させるという方法が取られるようです。
しかし…。この慣行も大いに疑問。
みんな毎日残業しているくせに、なぜ始業時間は厳守なのか。
文化の違いか…
日本の会社ではなぜか遅刻が厳格に取り締まられているので、遅刻するくらいなら有給を取得するというのが一般的らしい。
そのため、どうしても遅刻が回避できない場合は「具合が悪いので、半休をいただきます」と上司に事前に連絡するのが正解なのだとか。
良くも悪くも、出社時間に厳しい日本の『独特な有給の使い方』です。
有給休暇のために働くドイツ人
海外では、有給休暇の取得は労働者たちの『聖域』です。
会社も上司も、社員の有給取得に対しては…ほとんど口出し無用。
例えばドイツでは、日本とは比べ物にならないほど自由に有給休暇を取得できます。
現在勤めているドイツ企業では、基本的には有給申請が却下される事はありません。
- ドイツには連邦有給休暇法があり有給取得が義務付けられている
- コンプライアンスが非常に強いドイツ企業は有給休暇の全取得が当たり前
- 有給休暇の未消化は厳しく管理され、上司の責任能力が問われる
- 上司が部下に『休む理由』を聞くのは厳密には法律違反。理由はいらない
- 労働者は基本的に休暇のタイミングを自由に選べる
ドイツで有給申請が通らない場合は、例えば長期休暇申請が職場でカブってしまう場合など。それでも、かなり柔軟に対応してくれます。
ドイツ人の同僚の中には、3~4週間の『超』長期休暇を取るツワモノもいる。
マジでいる
ドイツのオフィス勤務者は、みんなルンルン気分で有給休暇を取得すます。
ドイツでは取引先などの『顧客側』にも有給休暇に対する寛大な姿勢があります。「来月2週間お休みをいただいています」などと事前に通達するのはお互い様で、そこには何の躊躇も無い。担当者の休暇中に仕事が発生した場合もできるだけ波風立てずに『その期間をやり過ごす』という一定の理解すらあります。
仮に有給休暇がビジネスやプロジェクトに支障をきたす可能性があっても、担当者の不在中は代替システムが整っているので安心。
休みやすい
ドイツでは、社員が休暇を取得しやすい環境作りが徹底されているのです。日本の職場には無い、有給休暇に対する絶大なリスペクトがあります。
そのような環境で働くドイツ人は、自分に与えられた有給休暇をとても大切に使います。
ドイツの労働者にとって、成果主義の中でストレスと戦いながら仕事をするために有給休暇は必要不可欠なもの。
有給休暇は1年を通してリフレッシュするための大切な時間だと認識しているので、「家族旅行」や「バカンス」などに企てられるのです。
人生はそっちがメイン
そのようなわけで、ドイツ人から見れば日本人の有給休暇の使い方は異常。
日本はただでさえ長時間労働や社内ルールでガチガチなのに、そのストレスを発散させるための『まとまった休み』すら取りづらい。
今後の働き方改革で、この『有給休暇事情』が変わることを願っています。
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