コダモンです。(@kodamon)
企業組織というものはピラミッド型に構成されています。
その中でも日本の会社は年功序列なので、勤務年数を伸ばすことで係長、課長、部長…と段階的な出世をするシステムで成り立っています。
会社員として働く上では、キャリアを積んで役職の階段を上っていくことが一般的に『理想像』とされている。
出世してナンボ?
しかし…。
出世することで失うものもある。管理職が『勝ち組』とは限らないのです。
「出世をしない」という選択肢
まず結論から。
- 仕事やキャリア以外のプライベートに幸せを感じる人
- 趣味や副業、家族や友人のために余暇の時間をあてたい人
- 仕事はお金のためと割り切ってストレスを減らしたい人
これらが当てはまる人には、『出世をしないという選択肢』が確実に存在します。
順を追って説明しよう
日本で働く人の90%がヒラ社員!?
日本では様々な業種・分野において毎日多くの社会人があくせく働いています。
しかし、その中で役職者の人数というものには限りがある。
エスカレーター式に昇給・昇級できる日本企業とは言え、要所に就く役職者の人数に制限があるうちは定年までヒラ社員を続ける人がたくさん存在するわけです。
(SSM調査における管理的職業に関する一考察,『広義の管理職』が対象, 2019年10月時点)
ざっくり言えば、日本の社会人の約90%が『ヒラ社員』という事になります。
街で見かけるスーツ姿のサラリーマンやOL、お店で働いている店員さんなどなど。そのほとんどが『課長』や『部長』、『店長』などの肩書を持たない人達です。
もちろん定年まで一度も大きな昇級を受けない人もたくさんいます。
でも、それは全然ダメじゃない。
ヒラでもいい?
ヒラ社員であるうちは給料は低空飛行かもしれないけれど、重要なポジションに就かない事のメリットだってあります。
いや…。
むしろヒラ社員の方が幸せかもしれないということ。
あなたは考えたことがありますか?
管理職は『勝ち組』か?
まず、「役職者は勝ち組か?」という質問に対する答えは:
給与だけを見れば『勝ち組』です。
残業手当がつかなくなる役職者ですが、例外として企業などでは係長などになりたての頃は残業代の分だけ収入が下がる傾向もあります。
しかし、基本的には役職に就くことによって手当がつき収入アップとなります。
(厚生労働省,賃金構造基本統計調査,2019年10月時点)
同調査では20~24歳の男性の非役職者の賃金が約21万5,000円なので、役職に就いた人の給料は『ヒラ社員』よりもかなり多い。
仮に22歳で月給22万円のヒラ社員が年1,5%の昇給を受け続けたとしても、40歳で受け取る金額は約28万7,600円。残業代を加味しても、係長級の平均給与の40万円におよびません。
お金は役職者が上
日本企業であれは、社員はみんな年功序列の恩恵でほぼ毎年ちょっとずつ昇給できる。
それでも、ボーナスや退職金なども考慮すると役職者との生涯年収の差は大きいです。
そのため、給与だけを見れば管理職が『勝ち組』と言えるでしょう。
しかし…。
これはあくまでもお金にこだわった時の話。
給料以外は管理職が『勝ち組』とは限りません。
そもそも管理職とはどういった人を指すのでしょうか?
管理職はツライよ
管理職とは、その制度としての意味は、昇進レースで労働者のやる気を生み出すものである。しかし、管理職のもともとの意味は人を管理・監督することを職務とする、使用者側に近い労働者である。
(参照元: 数字で見る管理職像の変化,2019年10月時点)
管理職の人たちの仕事には管理・監督するということがあります。
各課・部署の責任者として、部下たちがスムーズに仕事を行えるように監督をしながら人事評価や労務管理も行うこと。
簡単に言えば、管理職には部署や部下の面倒を見るという業務が増えます。
ちなみに、日本の多くの企業ではいまだに長時間労働が蔓延していますが、本来であれば部下が定時で帰宅できるように職場を管理するというのは管理職の仕事です。
しかし、フタを開けてみるとまったく機能していない。
みーんな残業してる
日本企業では『残業ありき』でしか職場をまわせないケースが多いです。上司は部下を定時に帰宅させる余裕がなく、部署全体の仕事量をまったくマネジメントできていない。
そのように管理職が原因で残業が無くならないという職場は多々あるのです。
残業前提で部署の仕事をまわそうとする管理職は多いです。日本では『残業が当たり前』という雰囲気があるためスルーされがちですが、慢性的に残業が行われている職場は上司のマネジメント能力の欠如が原因。部下を定時で帰すように調整するのは管理職の仕事です。
一定の権限を与えられる管理職者は社内の重要なポストにいるため、社内外の会議や各種報告に追われます。
毎日こなすべき仕事だけでも大変なのに、追加で部下の管理もしなければならない。
これはツライ
さらには、職場の人間関係にも気を配ったり、各人材の仕事に対する『向き不向き』なども考慮しつつ部下を上手にマネジメントする事を要求されます。
そんな中、最近の若い世代は柔軟な思考を持つ人が多く、中には『ダメ上司』に真っ向から対峙する人もいます。
「給料分の仕事しかしたくない!」
「手当が出ないなら残業したくない!」
こうなると、これまで『部下の残業ありき』で仕事をまわしていた上司は大変です。担当部署のアウトプットの責任を取らされるため、部下が帰宅した後に仕事を肩代わりするという人すらいます。
仕事がたんまり
ヒラ社員は、基本的に上から降ってくる仕事をこなしていれば、それでいい。
しかし、これが管理職となると状況が一変し、事業やプロジェクトの責任を問われる事になり大きなプレッシャーが追加されます。
毎日仕事に追われ、部署の面倒も見ながら上の期待にも応えなければいけない。会社では『古い世代の上層部』と『新しい世代の部下』の間で板挟みになり、結局一番仕事が多い。
そのような管理職は…「ツライ」の一言でしょう。
管理職が勝ち組であるかどうかは、仕事のストレスを考えると一概には言えないのです。
ワークライフバランスが無い管理職
お金以外にも、「地位や名誉が欲しい!」「世間体を良くしたい!」などの理由で管理職を目指す人もいます。
「裁量のある仕事を受けて成長したい!」「企業の舵取りを担いたい!」そのように考えてキャリアに生きがいを感じる人もいるでしょう。
出世競争の中で『勝者』となることに悦びを感じる人もいます。
出世欲が強い人
出世欲が強いことは決して悪い事ではなく、むしろそういった人材のおかげで企業組織は成り立っています。
仕事にストイックで部下に対する要求も高い上司は、たとえ職場では嫌われ者であっても、企業にとっては利益を生み出すために必要不可欠な人材です。
しかし…。
そんな管理職たちの生活は『ライフ』よりも『ワーク』が先行しがち。自分のポジションを失わないために必死でがむしゃらに仕事をする人もいます。
「定時以降になってから自分の仕事にとりかかる」
「休日にも仕事をしてメールを送る」
日系の大手企業に就職していた当時、オーバーワークの管理職はたくさんいました。
プライベートを犠牲にして働く上司は何人もいた。
『徹夜で仕事をして、始発で帰ってシャワーだけ浴びてまた出社』という働き方をした上司がいました。突発的な状況下ではなく、平時に自発的にです。そして、そのようなありえない働き方を飲み会のネタとして笑い話にするほど、長時間労働に対する感覚がマヒしているのです。
明らかに過労で、ストレスまみれの管理職。
どんなに高額な役職手当をもらっても割に合わない!
そう思いませんか?
夜遅くまで働く管理職には、家族と過ごす時間もない。自分の自由な時間すらもロクに確保できない。
『ライフ』を犠牲にしている、まさにワークライフバランスのない働き方なのです。
管理職試験を受けて役職者になれれば給料は上がるけれど、そのキャリアは確実にストレスと隣り合わせ。『責任が重くなる』『仕事が増える』『残業が増える』という避けられない現実を見て出世を拒否したい人もいるでしょう。
出世しない方が気楽?
ただでさえ仕事に興味がなく、キャリアにまったく無関心な人であれば”なおさら”です。
ストレスまみれの上司を間近で見ながら「あんな風に働きたくない…」と思っている人もいるでしょう。
ワークライフバランスを守るために出世をしないという選択肢は確実に存在するのです。
ドイツの『ヒラ社員』
欧米諸国の企業組織には、日系企業ほど多くの中間管理職がいません。
例えばドイツの職場は基本的に成果主義なので、有能な人材だけが管理職のポジションへプロモーションされます。欧米には年功序列のシステムも無く、昇給・昇級の交渉に臨むだけの成果を出せる高スキルな人材だけが上を目指すのです。
そのため、海外企業で「マネージャー」や「ダイレクター」などの肩書きを持つためには、日系企業以上に厳しい競争を勝ち抜く必要があります。
デキる人だけが上にいく
海外では役職者になることは『狭き門』なのです。
そのため、どのような業界や職種にも、定年間際まで裁量権のない立場で仕事をコツコツこなす人がたくさんいます。
例えば、ドイツの職場にもヒラ社員はたくさんいます。しかし、彼ら/彼女らには「出世競争に負けた…」などというネガティブな様子はない。
ドイツの平社員は、競争社会のタフな環境下で培った経験とノウハウで最短で結果を出す事に特化しながら働いているのです。
ドイツでは転職が頻繁に行われるため、社員の入れ替えなどは日常茶飯事です。年下上司のもとで働くのもよくあること。そのため、日本のように『世間体』を気にする風潮もありません。
そして何より、あくまで私見ですがドイツのヒラ社員はみんな幸せそうに仕事をしています。
ドイツで実際に働いてみて、日本との違いにビックリしました。
みんなイキイキ
社内事情に精通した40代~50代のベテラン勢はこなれたもので、朝早くに出勤して仕事を適宜に終わらせると、まだ日も暮れていない4時頃にいそいそと帰宅します。
仕事を真っ先に終えて、家族と料理をしたり、庭いじりをしたり、友人と飲みに行ったり。とにかくプライベートの充実に勤しむ(いそしむ)のです。
『ライフ優先』で働くドイツの会社員には仕事以外にやりたい事がいくらでもある。
仕事がメインではない
ドイツのヒラ社員は、プレッシャーかかる重要な仕事は上司に任せて、自分の仕事が終わればさっさとオフィスを後にします。
周りと足並みを揃える事もなく、各々のプライベートを優先させながら、効率良く働くドイツのオジサン・オバサン社員たち。
みんなとても幸せそうなのです。
ドイツの平社員の中には毎日定時きっかりに仕事を切り上げる人もいれば、1年に2回も3回も長期休暇へ出かける人もいます。『ワーク』を上手にコントロールしながら『ライフ』を充実させる事に精を出すのです。
管理職ほど仕事のプレッシャーとストレスがないことを逆手にとって、仕事以外の余暇の時間に全力を注ぐ。これがドイツのヒラ社員の姿です。
残業がほぼ無いドイツでは、余暇を気兼なく確保できるヒラ社員が『勝ち組』とも言えるのです。
管理職にならない会社員が1番幸せ?
話を日本に戻します。
結局のところ、社会人をするうえで『出世をしない方が幸せ』なのでしょうか?
その答えは、2つのパターンに分かれます。
「管理職にならない方が幸せ?」に対する答えがYES!の人:
☑️趣味や副業、家族や友人のために『余暇の時間』をあてたい人
☑️仕事は『お金を稼ぐため』と割り切ってストレスを減らしたい人
「管理職にならない方が幸せ?」に対する答えがNO!の人:
❌『年収1,000万円』など高収入にこだわる人
❌出世をしない事で変わる『世間の目』に耐えられない人
管理職にならない方が幸せかどうかは、最終的には個人の価値観によって変わります。
「年下に指示されるなんて無理! 絶対に耐えられない!!」
そう言って、プライドのためにがむしゃらに働いてキャリアを積む人もいれば…。
「このままヒラを続けるのが気楽でいいや…」
そうやってのんびり構えて、世間体も何も気にせず悠々と勤務を続ける人もいる。
働く人の個性や価値観の違いにより、色々な社会人・会社員の姿があります。
それでも、管理職は『勝ち組ではない』とハッキリ言える理由が1つあります。
大事なこと言うよ
そのキーワードはワークライフバランス。
日本とドイツで実際にサラリーマンを経験した自分が断言します。
日本で働いていた当時、ワークライフバランスの維持がとても難しいと感じました。
成果主義ではなく年功序列で組織されている日本企業は、『社員が辞めないこと』を前提に構成されます。会社は「みんなどうせ辞めない」というスタンスで運営されている事が多く、人事評価や労務管理にもそれが反映されがち。そのため、長時間労働や理不尽な言動に耐えて働き続ける社員が多いのです。
職場の人間関係が嫌でも、どんなに残業が多くても、10年も20年も耐え続けるというのは果たして”普通”なのでしょうか?
大きなミスを犯さないように気を配りながら、段階的に出世の恩恵に授かる日本の管理職。
そのキャリアは必ずストレスと隣り合わせです。
昨今の激しいグローバル戦線を勝ち抜くために、多くの日系企業は必死です。管理職に求められる職務とスキルの幅もどんどん広くなっています。
責任と仕事が増える
少子高齢化で人手不足が続く日本では、今後一人一人の管理職の裁量権も大きくなる。そして、その変化を受け入れるための『力量や技量』『心の余裕』などが求められます。
役職者になるには、企業に貢献する覚悟が必要だとも言えるでしょう。
しかし…。ヒラ社員であれば、ほとんどの場合がそれらとは無縁です。
日本企業では中間管理職まで昇りつめても役職定年となり、いつか『お荷物』と化します。そのようなキャリアよりも、ストレスの少ないヒラ社員で勝ち組となるためには、周りとの差別化となるスキルを身につける事が大切です。市場のニーズに対して持続的にソリューションを提供できる人材を目指しましょう。
管理職に就くという事は、その責任から来るプレッシャーと戦う事。
同じ会社に何十年も貢献して、たくさん残業して、職場の人間関係に耐えて…ようやく管理職になれる日本企業。
仮に仕事のストレスで体を壊すようなことがあっても、会社は知らん顔。勤続何十年で頑張った挙句、結局最後に残るのはお金だけなのです。
それ以上でも以下でもない
ヒラ社員の場合はお金で贅沢はできないかもしれないけれど、家族と過ごす時間や趣味の時間が確保しやすい。仕事に慣れれば業務をルーティーン化することも容易で、プレッシャーも少ない。
『ワーク』を上手にコントロールして『ライフ』を充実させることができるのです。
人生の勝ち組!?
残業と仕事のプレッシャーで家族と過ごす時間すらロクに作れない、ストレスまみれの管理職。
その道を目指さずに、ヒラ社員を続けて「プライベートをとことん充実させる!」というのは、決しておかしな話ではない。
『管理職にならない』という選択肢は、働く環境次第では心身を消耗しないための賢い選択かもしれないのです。
副業もやりやすいし
40代や50代で管理職にならない人は同期との差が大きく開き、『周りの目』も気になることでしょう。
それでも、『ワーク』だけが先行して『ライフ』の無い人生を送るより、万年ヒラ社員の方が幸せかもしれません。
いや…。
むしろ、なりたくもない管理職になったり、無理して出世して仕事一辺倒の人生を送るくらいならば…。
『出世をしない』という選択肢が正しいのです。
コメント
ものすごく大事なことを伝えてもらえました。いや、解ってはいたけど、こんなにはっきりと理論的に諭してくれるものはなかった。
そうなんだ、そうなんだよ!仕事ばっかしてて何の為の人生だよ。
日本に生まれて安全安心で世界に通用する円を稼げて、恵まれてる。
でも強い通貨を稼ぐ代わりに回遊魚のようにずっと働き続ける。
ヨーロッパの長いバケーションが本当に羨ましい・・
こういう考え方、ワークライフバランス、もっと日本に普及してほしい。
当たり前のことなのに!
コメントありがとうございます。
これからの若い世代のためにも、ワークライフバランスを保てる働き方がスタンダード化される事を切に願います。