コダモンです。(@kodamon)
ドイツのハーフとして日本で生まれ、18歳まで日本の田舎で暮らしていました。
片親はドイツ人ですが、日本で義務教育を受けて日本の礼儀やマナーを学びながら育ちました。
そんなハーフは、大学から長らく海外で生活していた事もあり、欧米人のように『ずけずけ』と物を言うこともある。

半分外国人
ドイツの大学を卒業してからは、社会人として日本とドイツで働いてみました。海外で働く、自称『グローバルなハーフ』として日本とドイツの両方で社会人を経験した。
その経験があるからこそ言えることは多々ありますが、例えば日本で『良し』とされる集団行動はドイツではとても珍しい。
日本では、多くの人が日常や仕事の場において『他人に迷惑をかけないように』気を配りながら生活しています。
そして…。
これが『ストレスの原因』になっているのです。
周りに合わせるのが日本では普通
まず初めに。
日本は素晴らしい国です。それは間違いない。
でも…。
そんな日本でも、ちょっと行き過ぎている部分があるのです。

too much
日本で重要視される社会の秩序やルール、そして『日本の常識』ですが、外国人には理解できない部分がたくさんあります。
学校で、職場で、公共の場で。
日本では、大小様々なルールが社会や組織の常識として確立されています。
学校には頭髪検査や服装検査があり、全校集会や「一糸乱れぬ整列」などの集団行動がある。
社会に出ても、「会社の朝礼」「先輩・後輩の上下関係」などなど、パッと思いつくだけでもたくさんあります。
そして、それらは日本独特の習慣・慣行なのです。

海外では馴染みがない
どんな時にも必ず『和』を重んじるのが日本。
日本はひたすらルールを守る事に徹する人が多いので、和を乱すような行為や一人だけ周りに反対するような行動が『自分勝手』だとみなされる。「他人に迷惑をかけている!」となるわけです。
ドイツハーフも、高校生まで日本で過ごしてきた中で「他人に迷惑をかけるな!」と教えられてきました。

日本生まれ日本育ち
集団行動を基本とする日本の学校教育の中で、「あれはダメ」「これはダメ」と、周りに合わせない行動は全て却下されてきた。
学校では髪型、服装、靴の色まで全てが統一され、ガチガチの校則を経験しました。それを少しでも守らないと指導の対象となり、「なぜみんなと同じようにできないんだ!」と怒られる。

なぜ『同じ』がいいのか…
こちとらハーフなので、どうあがいても周りと同じにはならないけれど。髪の毛は天然パーマだし。
何はともあれ、日本では画一性が求められる。
そして、本来は存分に羽を伸ばして『個性』を育む大事な年齢の子供に対しても「周りに合わせろ!」という教育をするケースが多いです。
「他人に迷惑をかけるな!」

あれは…忘れもしない中学生の頃。とある夏の暑い日でした。
その日は、学校行事の準備のために放課後は部活動が休みとなり、一部を除いた生徒は即時帰宅を言い渡されました。
「みんな今日はすぐ帰宅するように!」そのように先生に念を押されていたのに、ドイツハーフは数人の友人と校庭の隅でバレないように談笑していました。
ひとしきり遊んだ後にコソコソと帰ろうとすると…。行事の準備をしていた、部活動の顧問の先生と鉢合わせてしまったのです。

怒られる…!
一瞬そう覚悟したけれど…意外な事に、その先生はこちらをチラッと一瞥(いちべつ)しただけでスタスタ去って行ったのです。いつもはとても厳しい人なのに。
拍子抜けしたような何とも言えない気持ちのまま帰宅した、次の日。
事件は起きました。
普段通りに登校して何食わぬ顔で授業を受けていると、休み時間に部活動の先輩たちに呼び出されました。
なぜか全員勢揃いです。しかもみんな明らかに不機嫌そう。「なんだろう…?」そう思いながら話を聞かされたコダモンは、愕然としました。
「お前のせいで部活が無期限休止になったんだよ!」
「今朝、職員室前の黒板に書いてあったんだ!」
「先生に理由を聞いたら『コダモンに聞け』だってよ!」
「お前何したんだ? 先生に謝ってこいよ!」
…目の前が真っ暗になりました。

頭クラクラ
思い当たるのはもちろん、前日の出来事。自分は確かに間違っていた。でも、本人だけでなく周りの人も罰せられるだなんて…!
部活も先輩も大好きだったドイツハーフは、泣きながら先生に謝りました。
その件はこれで片付いたけれど、その日から自分の心には「周りに迷惑をかけない」「他人に迷惑をかけない」という言葉の、暗い、辛い重みが刻み込まれました。

意気消沈
自分1人が殴られたり、怒られたりするならそれでいい。間違った行いが、『個人』として罰の対象になるのは当然です。
でも、そうではなく集団での罰則にすこと。
「お前がルールを守らないからだ!」
「お前のせいでみんなに迷惑がかかるんだ!」
たった1人の人間に理解させるために、周囲を巻き込んで圧をかけること。
職場では集団で仕事をして結果を出さなければならないシチュエーションが多々ありますが、日本はチームワークではなく『集団行動』になりがち。周りに合わせない人は「自分勝手」「和を乱してる」などとみなされやすく、多数派に合わせる暗黙の同調圧力があります。付き合い残業やムダ会議も「みんなやってるんだから!」という思考停止な理由で行われるケースが多いです。
ここまで読んだあなたは、これが『普通のこと』だと思いますか? 調子に乗ったドイツハーフに対する、学校の先生の心のこもった『良い指導』だと思うでしょうか。
個人主義の海外では集団行動が通用しない
話をちょっとだけ海外に移します。
例えばドイツ。ドイツ社会は基本的に個人主義です。そして、それは学校教育も同じ。
ドイツでは小学生も留年をさせられます。
生徒の出自が多国籍なドイツの学校では語学や知識のレベルが子供によって様々なので、『できない子』『アウトローな子』などは10歳そこそこで容赦なく落第させられます。

留年する子は普通にいる
小学生から全てが自己責任という教育を受けるドイツ人。
ドイツでは幼少期から何をするにも『個人』として向き合う必要があり、集団行動には何も期待できないのです。
そうやって社会人になったドイツ人は…みんな自己主張が強いです。
職場やビジネスの現場でも、各々が日々の業務の中で適宜に判断して『自己責任』と割り切って働いています。
仮にドイツ人の働き方に対して「周りに迷惑だろ!」などと注意しても、「は?」「だから?」「私と何の関係があんの?」となる。
自分の仕事の作業効率とプライベートを優先させるドイツ人は、ガンガン他人に迷惑をかけるのです。

たまにマジで迷惑
ドイツ人は、各々に定められた業務とターゲット以外の仕事には興味が無い。関係のない会議には参加しないし、周りの目を気にして残業する事もない。
仕事を進める中での前提条件として個人主義がありますが、それでも企業や各自の利益のためにはチームとして働かなければならない。そのため、欧米諸国はビジネスで結果を残すために適材適所のチームワークで挑むのです。
日本の『集団行動』と海外の『チームワーク』は別物だと言えるでしょう。

足の引っ張り合いはNG
ルールや規則を重んじる日本人からすれば「自分勝手だ!」「職場の和を乱している!」などという働き方が、ドイツ人にとっては当たり前。
社員1人1人の判断が尊重されるドイツでは、職場における『仕組み』や『ルール』が少なく、それに付随する人間関係の摩擦も少ない。
結果として、職場における余計なストレスが少ないのです。

実際そうだった
国が変われば文化や習慣も変わるため、もちろんそこに優劣はありません。
それでも…日本の『周りに迷惑をかけない精神』には疑問が残るのです。
他人に迷惑をかけない日本はストレスも多い?

話を日本に戻します。
「周りに迷惑はかけるな!」そう教えられて社会人になった人々は、会社や日常生活の中でもそれを徹底します。
4年半ほど日本の大手企業に勤めていましたが、営業部ではみんな『周りに合わせながら』働いていました。
上司が残業するなら部下も残業するし、業務に関係のない会議でも上から招集がかかれば問答無用で全員参加する。
意味不明な職場ルールもたくさんあり、それが明らかに不効率でもみんな黙って従っている。

それが当たり前
そのような日本の会社では、少しでも集団行動を乱すと「あいつは空気を読まない」「迷惑な奴」などのレッテルを貼られます。
社会人になっても集団でしか生きていけないと勘違いする人が多いため、職場では誰もが『暗黙のルール』や『見えない決まりごと』をむやみやたらと気にします。
「自分に関係ない仕事だけど断ったら誰かに迷惑がかかるかもしれない…」
「有給を取ったら迷惑がかかるかもしれない…」
そのようなことの繰り返しで、知らず知らずのうちに疲れてしまう。
周りに迷惑をかけないように働いた結果、ストレスが増えるのです。
帰りたい時に帰れないし、休みたい時に休めない。全員が他人に迷惑をかけない事を徹底するあまり、無意識のうちに『ストレスのなすり合い』になっているのです。
もちろん、組織の中で働く上ではある程度の「気遣い」や「助け合い」が必要なのは間違いありません。
それでも…。
日本では、会社以外の日常生活でも「周りに迷惑をかけない!」がストレス要因になっています。
「他人に迷惑をかけない」結果…
「ウチは子供に『絶対他人に迷惑をかけるな』と教えています。それだけは徹底している」
そうやって自信たっぷりに話す芸能人をテレビで見かけました。周りは全員「なるほどー」と言って同調している。
でも、そのような考え方には少なからず危機感を感じます。
何事にも他人に迷惑をかけないことが前提になってしまうと、ほんの些細なことに対しても「迷惑だ!」と反応する狭い心の持ち主になってしまうからです。
「電車が混雑している時にベビーカーは迷惑!」
「公共の場で泣き叫ぶ子供は迷惑!」
最近の日本は、他人に迷惑をかけない精神だけが独り歩きしてしまい、寛容さに欠けていると思います。心に余裕のない人が大勢いる…ストレス社会。
「何でも周りに合わせる!」
「出る杭は打たれる!」
集団行動を重んじるあまりに同調圧力が強い日本では『個性』を伸ばすことがなかなか難しい。
また、周りに迷惑をかけないという思考や姿勢は、海外勢からは『引っ込み思案』『お人好し』などと勘違いされてしまう事もあります。グローバルビジネスにおいては、一方的に損をする結果にもつながりかねません。

海外は主張した者勝ち
もちろん、『周りに迷惑をかけている意識すらないドイツ人』のような働き方が良いとは言いません。
しかし、日本とドイツ両方の文化を知り、2つの国でサラリーマンとして働いてみた結果…。
日本のストレス要因の一つに「周りに迷惑をかけない!」という考え方があると、強く感じるのです。
コメント
そうなると今度問題になってくるのが自分自身のアイデンティティをどこに置くかですよね。
日本人でもありドイツ人でもある。
でもそうすると100%何人と言う感覚と、実際の時間の割き方が100%ドイツ人にも負けるし、日本人とも違ってくる。
結局は自分がどこで生きるか?を自分自身が腹を据る覚悟の話になってきますよね。
常に問題は自分にあると言うか。
コメントありがとうございます。
アイデンティティどうこうはあまり深く考えておらず、日本とドイツの両方が大切な母国だと思っています。
両国の文化・習慣・思想を実際の生活を通して理解しているからこそ、良い事も悪い事もたくさん見える。それにとても感謝です。
ドイツ/日本の両方の観点から物事を捉えることで生まれる『悩み』『葛藤』はありますが、それのおかげで今の自分があるのだと思っています。
はじめまして。大変面白く拝見しました。最初から最後まですごく共感できました。
主人がアメリカ人で子供たちがハーフです。結婚してからは日米を行き来することが増え、子供たちも一年のうち半分は現地の学校などに通うので、ますます日本という国を客観的に見る機会が増えました。
こんなことを書いたら日本から出て行けと批判されそうですが、本当に日本で子育てすることの息苦しさを年々感じています。電車やバスでベビーカーは迷惑がられ、公共の場では騒いでいなくても子供がいるだけで向けられる嫌な視線。日本では子供って迷惑がられるんだなぁとひしひしと感じます。公園に行けば子供が他の子供とトラブルしないかひやひや、何かあればすぐすみませんと相手の親に言わないといけない空気です。
どれもこれも、周りの人に非常識だと思われないため、迷惑かけないためにずっと気を張っていなきゃいけないんですよね、日本って。日本人の自己肯定感が低いのはこれも関係ありそうですよね、出る杭は打たれるし。
まさにコダモンさんが書かれていましたが、以前、近所の方に赤ちゃんが生まれてどんな大人になって欲しいですか?と主人が尋ねたら、とにかく他人に迷惑をかけない子にと言われた、とすごくびっくりしていました。
アメリカにいると子供を見るとにこにこしてくれたり、話しかけてくれる人が多いんですよね。ベビーカー押していると必ず助けてくれる人もいるし、子供が社会の一員として当たり前に歓迎されていることを感じます。
もちろんアメリカよりもドイツよりも優れている部分が日本にはたくさんあると思っていますが、、正直子供たちのことを考えるとアメリカに移住した方が良いのか悩みます。
大変参考になる記事をありがとうございました:)
コメントありがとうございます。
記事に共感してくださって嬉しいです。
また、貴重な体験談をシェアしていただきありがとうございます!
子育てを含めそれらを取り巻く環境に関して言えば、Rayさんがおっしゃるように日本では息苦しさなどと向き合わなければいけないシーンは多々あると思います。
自分の場合は、ハーフという事もあり日本の田舎の学校で色々と苦労しました。それでも、当時の経験があったからこそ今があるのでどちらが正解とも言い切れないのかな…と思っています。
「日米を行き来することが増え…」とありましたので、お子様はそのようなグローバルな環境下であれば自然と『違い』を肌で感じます。それを通して常識や固定観念にとらわれない考え方ができるようになるんですよね。
頑張ってください:)