コダモンです。(@kodamon)
かなり前の投稿ですが、茂木健一郎氏のツイートに『没個性』という単語が使われていました:
今日の夜、東京のある駅の近くを歩いていたら、全く同じようなリクルートスーツをきた学生の集団が数十人、騒ぎながら通り過ぎていた。画一性。没個性。この国は、本当に終わっているんだなあ、と思った。経団連のお墨付き。
— 茂木健一郎 (@kenichiromogi) June 6, 2017
日本とドイツの両方で社会人を経験している、わたくしコダモン。『没個性』について掘り下げてみようと思います。
いきます
日本は社会人に『個性』を求めない?
Twitterでの茂木氏のつぶやきは、かなり的を得ていると思います。
「日本が終わっている」かどうかはわかりませんが…。日本の大手企業に4年半就職していた身としては、とても共感できる。
当時の会社の人間はみんな一様に残業して、周りの目ばかり気にして働いました。新入社員の時から『日本の社会人』として鍛え上げられた人たち。
そんな日本では、就活生に個性は求められない。
みんな同じ時期に、同じような格好をして就職活動をする。企業面接では同じような質疑応答が繰り返されて…マニュアル通りの対応が好まれる。
画一性
日本の新卒一括採用のシステムでは、どの学生もみんな基本的に『横並び』にさせられます。
1960~70年代の高度成長期に確立された終身雇用という日本的雇用慣行。それは、過去のイケイケドンドンな時代に『労働者を囲い込むため』に出来上がったものです。
つまり古い
しかし…。昨今の日本は売り手市場で、日本人の労働人口も年々減少しています。これからの日本では転職が当たり前となり、終身雇用は過去の産物と化します。
このような『長期雇用ありき』の採用システムである新卒一括採用。それを経て社会人となっても個性は求められない事が多いです。
1つの会社に定年まで勤め続ける事が『良し』とされる環境で、職場の人間関係がどんなにストレスでも耐え続けること。
それが美徳?
大きな問題を起こさなければ、年功序列の賃金体系で昇給ができる。
そのため、周りと同じように働いて…『波風立てずに』会社員生活を送ろうとする人が多い。
…それも頷ける
終身雇用や年功序列のシステムは、どうやら日本人の国民性にも合っているらしく、かれこれ何十年も同じ制度です。
日本企業の人材採用は、大手企業を中心に過去何十年も新卒採用を重視してきました。リーマンショック後の経営環境が厳しい中でも企業は採用数を極端に減少させないようにしてきたほど。長期雇用を前提に社会人としてのキャリアの大部分を1つの企業で形成することを企業側も新卒者も望む傾向があります。
(厚生労働省,労働市場における人材確保・育成の変化,2020年3月時点)
要するに、会社は社員が辞めない事を前提に人材育成と長期プランを策定するので、採用の段階から『扱いやすい人』『辞めない人』が欲しいわけです。
企業は育てやすい基幹的人材を定期的に確保するという観点から、他社経験のない新卒者を選好する傾向にあるとされる。
(出典は同上)
企業が好んで選ぶのは他社経験のない『会社色に染めやすい人』。それは今も昔も変わっていません。
『個性』が無いまま就職活動
ビジネス市場はグローバル化が進んでいるのに、日本は昔ながらの方法と考えで社員を確保しています。
企業が一斉に新卒採用活動を行い、就活生がみんな同じようなタイミングで動き出して企業説明会などに参加する。毎年お決まりのルーティーンです。
ポテンシャル採用とは名ばかりで、基本的には『会社を辞めない人』を採用するのが大前提。
(企業の大学新規卒業者の採用方法のあり方,2020年4月時点)
企業側はせっかく採用した新卒に辞めてもらっては困るので『辞めない人』『会社色に染めやすい人』に焦点を当てます。
個性はいらない?
「採用担当者は、リクルートスーツの向こうにある個性を見ている!」
そのような意見もあるらしいけど…。仮にそうならば、なおさらリクルートスーツの存在意義が不明。
採用される側もする側も、就職活動中はルールやマニュアルで『がんじがらめ』。そのため、結果的に学生は当たり障りの無い、ミスを回避するための行動と容姿になってしまう。
日本の就職活動は髪型やヒゲ、服装からアクセサリーなどにいたるまで細かく気を配る必要があるらしいですが、この時点で既に型にはまってしまっている。内定のために『就職活動という期間だけ』自分を変えているつもりでしょうが、その後の社会人生活でも同じ事の繰り返しが待っています。
『服装自由』であっても結局リクルートスーツを着込む学生は多いし、とにかく「真面目に」「悪目立ちしないように」というスタンスになってしまう。
これが没個性
日本ではなかなかグローバル人材が育たない…などと言われますが、社会人のスタートである就職活動を没個性でスタートさせる所から、既に海外との差が開き始めているのかもしれない。
レールに乗せられてる?
そもそも、グローバル社会では個性が無いと海外勢とは渡り合えません。
「他人と同じ事」はリスクでしかない!?
外国人、特に欧米人は個性の塊です。
現在勤めているドイツ企業には、髪の毛を赤に染めている内勤の女性もいれば、ヒゲをもっさり生やした営業もいる。
十人十色
ドイツの学校には日本のような集団行動がなく、ドイツ人は『個性を伸ばす教育』を受けます。小学生ですら留年するほど厳しい競争社会で育ち、社会に出た彼ら/彼女らは存分に個性を発揮します。
成功も失敗も全て自己責任である海外ビジネスでは、いかに『自分』を前面に出しながら結果を残せるかが大事です。そのため…。
『周りと同じ』というのは百害あって一利なし!
他人に合わせて行動をしても、何のメリットもないのです。
ドイツでは通年採用が行われており、学生の卒業のタイミングも就職活動時期も各々異なります。集団ではなく『個人』が尊重されるドイツ社会は、学生も社会人も全て自己責任。就職活動で会社が指定する服装などは無く、自己判断で『デニムにシャツ』を合わせるスタイルで面接に挑む人もいます。
コダモンが日本で働いていた当時、ハーフというだけで第一印象は強烈でした。
でも、それはあくまで日本国内の話。ドイツ企業に入社して仕事をしてみたら、自分の存在がまったく特別でない事に気づかされたのです。
海外は多国籍
グローバルビジネスの現場では周りと同じことをしていて結果を残す事はできません。
日本で就活をする若者には、『周りと同じ行動』『同じ見た目』が求められる。入社する前から、ある意味日本式で企業にアプローチする学生達。
就活サイトには「恥をかかないための就活マナー!」「就活のための身だしなみチェックリスト!」などとご丁寧に掲載されています。
…中学生?
しかも、第一印象が面接を左右するから周りのみんなと相違ない身だしなみが良いらしい。
そのような『没個性』でキャリアをスタートさせる事は、リスクでしかありません。
リクルートスーツを着る意味
欧米諸国の企業は基本的に通年採用であり、日本のような就活シーズンが存在しません。
ドイツなどヨーロッパ諸国の社会人は何をするにも自己責任。会社生活は『個人戦』です。
日本のように学生が一斉にワラワラと就職活動を始める事もないし、マニュアルや就活マナーなども無い。
自己判断
そんなドイツにおける就職活動では周りとの差別化が1番大事です。企業が欲するスキル・能力を学生の頃から身につけてポジション獲得を狙います。
客観的に見れば、リクルートスーツを着る目的は『周りと同じように見える事』です。
それ以外の用途はない?
リクルートスーツを就活で着用する目的には、「清潔感や真面目さが現れるから」といった理由もあるらしい。
しかし、いずれの場合も一般的なビジネススーツで十分なはずです。
「リクルートスーツが無難」「リクルートスーツを選べば問題ない」そういう思考停止な就職活動はするべきではありません。
リクルートスーツを着る『明確な理由』がなければ、着なくていいのです。
ただそれだけ
リクルートスーツで試される学生たち
「自分の個性は見た目でなく内面で勝負しろ!」
これは、就職活動のセミナーなどで言われる事だそうです。
しかし、それは他人にどうこう言われるものではない。外見も内面も、そのどれもが他人との差別化となる『ツール』です。
そして、その全てが就活生の個性。
海外の学生は、実力主義の世界へ飛び込む前に「何をしたいか?」を明確にして積極的に行動して各々の判断・裁量で就職活動を進めます。欧米では新卒も即戦力。その反面『キャリア採用』がない日本の就職活動では、学生の専攻やスキル、海外経験や研究テーマなどは参考程度にしか反映されない事が多いです。
日本企業では、入社時から職場や部署内で『周りに合わすこと』を求められ、先輩後輩の上下関係のもとに社員が叩き上げられます。
「社内のルールが世界のルール」とでも言わんばかりの組織体制と環境下で、ひたすら周りの目を気にしながら働いている。
グローバルビジネスにおいて苦労する事が多い日本企業。『日本式』が海外で通用するはずがないのに、昔ながらの精神論や古い思考で働く人も多いです。
うーん
日本で『没個性』の就職活動をするという事は…その予備軍になるという事。
そして…。それを体現させる『ツール』がリクルートスーツ。
まさに画一性。『没個性』。
日本企業がこれまで高度人材の育成に時間とコストをかけてきましたが、グローバル化の波は日本企業の活動に影響を与え、日本の雇用システムそのものに変化をもたらそうとしています。
企業はこれまでのように社員教育に時間とお金をかけられなくなり…終身雇用や新卒一括採用がどんどん見直される事でしょう。
変わっていく
来るべき変化に柔軟に対応することで、就職活動の『没個性』も変わるのです。
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