コダモンです。(@kodamon)
日本企業からドイツに赴任した時に、ドイツ人の働き方に衝撃を受けました。
それまで日本の会社員として『日本式』に働くのが当たり前だった自分にとって、海外勢とのギャップは大きかった。
カルチャーショック
そんなドイツ赴任時に、とある20代後半のドイツ人の同僚がいました。
その彼は、社内の偉い人が直々に他社からヘッドハンティングしてきた、高待遇で入社した人。『上層部の期待』も大きい、爽やかなイケメンです。
しかし…。
周りのドイツ人からは鬼のように嫌われていた。
そんな彼には、それでも出世の道が約束されている。一体どんなカラクリがあるのでしょうか?
職場で嫌われる人は『無能』とは限らない
会社員が社内で嫌われる理由は様々です。
職場の人間関係は非常に複雑で、当ブログでも「時には嫌われる行動も必要!」と書いているほど。
そもそも、パワハラやセクハラなど『明らかにアウトな行為』をする人は…嫌われて当然です。
犯罪すれすれの人
そうではなく、業務遂行上『普通に仕事をしている』つもりでも嫌われてしまう人。
会社員として働いていると、次のような人と付き合う必要があります。
- 残業が当たり前だと思って仕事をしている人
- 社歴が長く「自分は偉い」と勘違いして上から目線な人
- 人の話が聞けず常に否定的な人
- 時間が守れない・最低限のマナーすらない人
- 人や性別によって露骨に態度を変える人
- 有給休暇を取らない・部下に取らせない人
このような人は周りから煙たがられますが、当の本人にはその自覚がないケースもある。
上司であればなおさら始末が悪く、ダメ上司のせいで苦労する部下も大勢います。
ストレス要因
明らかに無能な人が職場で嫌われるパターンは多々ありますが、そうではないケースもある。
有能なのに嫌われる人もいるのです。
優秀な人は会社で嫉妬されやすく、些細なことでも恨まれたりする。そのせいで理不尽ながら嫌われてしまう人もいます。
しかし、それ以上に『働き方』が原因で周囲の反感を買う場合が多い。
優秀な人ほど頭の回転が早いので、「その場をいかに上手に乗り切るか!?」ということに秀でています。
成果主義・実力主義である外国企業では、その傾向が特に顕著です。
周りから嫌われていても、『上』に対しては常に最善を尽くす。経営陣などの上層部から重宝される人材の典型です。
会社にとっては大事な人材
これが、優秀だけど『周りから嫌われている』という人。
冒頭の若いドイツ人のパターンです。
会社で出世する人の特徴
例のドイツ人は、まだ20台後半という若さにもかかわらず、大手企業での就業経験とMBAを引っさげて『鳴り物入り』で入社してきた人材でした。
日本企業のドイツオフィスのプロジェクトマネージャーの1人であり、その存在が日本の本社まで知れ渡るほど。
期待されてる
そのドイツ人は確かに『知識』が豊富でしたが、『経験』には乏しかった。しかし…。
それらをはるかに凌駕(りょうが)するほど世渡り上手でした。
海外では人事権が上司にあります。そのため、上司に良い結果を報告する事『だけ』に特化して働く人が出てきます。他人の功労を平然と自分の物にしたり、事実と異なる報告をして内容を盛る人など。成果主義の社会では『他人を蹴落とすこと』が日常茶飯事です。
そのように『個人のメリット』に執着するドイツ人プロマネと実際に仕事をしましたが、彼には具体的に次のような嫌われ要素がありました。
- チーム(営業、エンジニア等)が知らない所で独断で行動する
- 社内の打ち合わせで合意した方向性を無視する
- 取引先に事実と異なる・約束できない内容を提案する
- トップ層へは必要以上に報告内容を『精査』して良い顔をする
要するに、彼の働き方はチームプレーではなく個人プレー。
職場で嫌われる1番の理由は、チームをまとめてプロジェクトをリードするのが仕事なのに、自分のキャリアを優先して『個人プレー』に走る事。
周りは大混乱
そのドイツ人は根っからのキャリア志向であり、『上』に対してはとことん良い顔をしたい。上司や日本人駐在員などの『偉い人』への報告の際には、平気で事実を捻じ曲げます。
そして…。このプロマネの働き方の『あおり』を真っ先に食うのは同僚や部下です。
上司視点では基本的に『成果が出ている』『頑張っている』という見方しかされません。
このような働き方ではいつかボロが出る…と思いきや、このプロマネはもちろん社内の『根回し』にも十分気を配っていた。悪い話がなかなか上へ届かないようにしていたのです。
根回し(ねまわし)とは、樹木を移植するに先立ち準備する一連の作業のこと。転じて、物事を行う際に事前に関係者からの了承を得ておくこと(下打ち合わせや事前交渉などの段取り)を指す言葉ともなった。
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』,根回し,2020年4月時点)
案の定、そのドイツ人はどんどん社内でのポジションを築いていきました。毎年のように昇給を受け、欧州の経営陣からは『将来の幹部候補』と目されていたのです。
出世術…?
一緒に仕事をするドイツ人からはとても嫌われていた。それでも、世渡り上手な彼はどんどん出世の道を突き進んで行ったのです。
ドイツで実際に経験した話ですが、年功序列の賃金体系である日本の職場でも同じようなケースはあるでしょう。
ドイツの研究で明らかになった『出世』の仕組み
「なぜ腹黒い人が成功するのか – 害悪なキャリアの展開」
(“Why Dark Personalities can Get Ahead: Extending the Toxic Career Model”,2020年4月時点,訳:コダモン)
このようなタイトルの研究が、ドイツのボン大学の研究グループよって行われました。
その目的をおおまかに言えば、「嫌われ者ほど出世上手」という通説を調べること。
実際に職場でインタビューを行い、そこで働く人の社交スキルと評価との関連性を調べたのです。
研究内容は「仮説を含む」と前置きされているものの、上司を含めた3人1組からなる参加者計203組という比較的大きなデータを収集したものです。
ちゃんとした調査
その分析方法をざっくりまとめると…。
参加者203名にオンラインでの匿名アンケートを行い、そこで事前に他人と比較した場合の『正直さ』『謙虚さ』を自己評価させ、同数の同僚に参加者の社交スキルを判断してもらい…さらに上司に評価をさせるというもの。
結論から言うと、この研究では:
嫌われている人でも『職場での社交スキル』(social skill at work)が高ければ上司からは優秀な人材だと評価される
そのような結論に至りました。要するに…。
職場の嫌われ者でも上司の評価が高ければ出世する
という事です。
同僚にウソをついたり、ダマしたりする行為も『社交スキル』が高いからこそ成立する技…なのかもしれない。
嫌われ者は高スキル?
社交スキルは、言い換えれば『コミュニケーション能力』でもあり『根回し力』でもある。
前述のドイツ人プロマネにも、非常に良く当てはまります。
日本企業では『ダメ社員』が昇進する?
日本で大手企業に勤めていた当時、社内でも有名な『ダメ役員』がいました。
大手企業の、しかも枠の限られる役員席に座るのだからさぞかし優秀…なのかと思いきや、実際は違った。
社内の内情にくわしい先輩社員に聞くと、その人は世代的にも『ゴマをすって出世できた人』だそうな。
ゴマすり人間
海外とは違い、日本企業ではライン長レベルの上司に人事権がないこともあり、出世のためには人事部や人事権を持つ役員に働きかける必要もあります。
結果的に、実際に仕事を知らない・見ていない人が出世にからむため、『仕事終わりの付き合い』や忖度などのゴマすり行為でどうにかなる場合もあるのです。
見てらんない
日本では、本当に優秀な人が『ゴマすり野郎』より評価が低くなる場合もある。
成果主義の欧州では、仮に職場の嫌われ者であっても結果を示す事が出世の大前提です。ゴマすりだけではどうにもならない。
それでも、海外企業でも日本企業でも、出世するための共通の条件としては『高い社交スキル』があるでしょう。
高スキルで能力が高い人でも、コミュニケーション能力が低い人は出世できません。海外企業では、ネットワークをフル活用して重要な情報を収集し『自分の成果』として上司に上手にプレゼンできる人がキャリアを築きます。日本企業では「職場の付き合い」が勤務態度などの評価に影響する場合もあると言われますが、裏を返せば『コミュニケーション能力が問われている』という事です。
職場でベラベラおしゃべりばかりしている人も、上司からは『ムードメーカー』として一定の評価を得ている可能性もあるのです。
そう考えると…日本の『ゴマすり』も立派な社交スキルなのかもしれない。
職場の嫌われ者が出世するという事は、大いにありえるのです。
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