このブログを書くキッカケになったお話。全10話のシリーズ記事です。
海外経験豊かなハーフがゴリゴリの日系企業に就職してみた。
第9話です!
第1話はコチラ:
日本人駐在員の働き方
勤めていた大手企業は世界各地に拠点を持つグローバル企業なのに、そこで働いている日本人の思考や行動は本社の日本企業そのものでした。
現地のビジネスと組織体制は『ドイツ式』に運営されているのに、そこで働く日本人の”偉い人たち”は日本国内のメンタリティのまま働いています。
海外は日本の就業規則と異なり、外国人の働き方や有休の取り方は大きく異なります。本来はそれらを考慮しながら日本本社の経営陣に代わって赴任地の事業を運営する必要があるのですが、それができない。『言葉の壁』もあり、現地スタッフと日本人の距離はなかなか縮まりません。
そんな海外駐在員は、どの業種でも『激務』になりがち。
本国の手足として駐在先で働く日本人の仕事は、現地の拠点運営やビジネスの促進に加えて『本社からの仕事』や『本社への報告』などの業務がたくさんあります。
日本より忙しいかも
そのような赴任者たちの働き方はストレスまみれです。
- 海外拠点の仕事ぶりを本社に『見える化』させるためにムダ会議とムダ報告が増える
- 本社の人間は海外拠点の『日本人』を何かと頼るのでムダな仕事が増える
- 駐在員は好待遇であると同時に「その分ちゃんと働け!」とハッパをかけられる
これらの要素が上手に合わさって、駐在員にはプレッシャーがかかります。
ムダな業務は山ほどあるけれど、その対応を怠ると「何のために出向しているんだ!?」となる。
むむむ
現地での仕事は、単純に楽しかった。
けれど、海外とは言ってもベースは日本企業なので、いたる所で本国と同等かそれ以上の『日本式の働き方』が求められます。
ドイツ駐在が「一筋縄にはいかない」と気付かされるのに、時間はかかりませんでした。
駐在先で日本人上司と働いてみた
ドイツに来て働いていく中で、1番気になったのはやはり『日本人上司』でした。
彼らは、現地スタッフから常に一定の距離感を保ちながら、なぜかいつも日本人同士でグループ行動をしている。
例によって集団行動
そんな赴任先のドイツオフィスには、『最高執行責任者』という、肩書きだけは立派な駐在員がいました。
聞くところによると、その人は新卒から生え抜きで…勤続ウン十年。50代後半の、かなり古株の人です。
燦然(さんぜん)と輝く頭の持ち主で、これまでの会社員生活でそれなりの結果を残して来たから抜擢されたのだとか。
バーコード頭の意
何はともあれ、その人は毎日『駐在員のお手本』のように働いていました。
- 定時以降に駐在員だけで会議&残業
- 休日にも日本からのメールや電話に対応
- 本社への報告書に毎週膨大な時間と労力をかける
- 休暇中でも仕事をする
そして…。
ドイツハーフの駐在期間中は、このお偉いさんが実質的な『上司』でした。
悲報
オフィス内のお互いの席は目と鼻の先。
毎日たくさん残業してせっせと『日本式』に働く日本人の上司のもとで働くことになりました。
駐在員として働くこと
日本で働いていた当時、会社の人間の集団意識はとても高かったです。
そのような組織で出来上がる『会社員』は、異国の地でも忠実に日本で学んだ働き方を続けます。
海外駐在員がそう
そのため、彼ら/彼女らの結束力は高い。
「本社の働き方を忘れずに、海外でしっかり結果を残して来い!」
このような本社からのお達しのもと、日々プレッシャーを抱えながら働きます。
海外拠点と事業規模が大きいほど、人事施策やビジネスのプロセスは『現地の規定や習慣』に依存する事になります。本社の手足である駐在員がいくら『日本式』を海外で実行しようとしても限界がある。ルールも文化も違う海外事業では合理性に基づいた妥協点を見つける事が大切です。
組織の中で社会人として上手に飼い慣らされた会社員。海外での働きぶりも完全に日本のソレ。
従順に働く
赴任先の駐在員は、いつでも本国の期待に応えられるように常に神経を張り巡らしていました。
そのような状況だから、当然のように仲間意識の強い『日本人同士』でかたまって仕事をする。
運命共同体?
ドイツハーフはドイツ語が母国語だった事もあり、現地のドイツ人とはすぐに打ち解けられました。そして、彼ら/ 彼女らとつるむ事が多かった。
他の日本人駐在員は、昼食時なども毎回お決まりのように『日本人だけ』で食べに行こうとします。しかし、自分だけがそれをやんわりと断って別行動。
それは決して良い事ではないかもしれないけれど、なんとなくこれまでの経験から『日本色に染まる事』を避けている自分がいたのです。
ドイツで働いているし
そうやって働くうちに、本社時代には無かった仕事に対するモチベーションも上がってきました。
本来の(組織上の)上司であるドイツ人のダイレクターとの関係も良好。所属するセールスチームの中でも、数ヶ月経った頃にようやく信頼関係を築くことができました。
しかし…。
そんな環境も長くは続かなかったのです。
海外でもしっかり『日本式』の働き方
ある日のこと。
例の『最高執行責任者』の上司に呼び出されました。
なんだろう?
このような偉い人から直接声をかけられる事は、都内の本社勤務時代だったらありえない。
しかし…ドイツ駐在員は一番上の人を含めてもたったの数人。そして、日本人は例のごとく日本人だけで打ち合わせをしたがるので…ドイツハーフにも声がかかる。
何はともあれ、「コダモン、ちょっと」と呼ばれるまま上司の部屋に入ると、そこには案の定日本人だけが集まっていました。
時間を見ると、午後4時。ちょうどドイツ人が帰る時間帯です。
またか…
このような事は日常茶飯事だったのですが、その日の会議はあくまでビジネスの進捗確認などの基本的なこと。
何の変哲もない会議だったのですが、なんとそこで3時間も拘束されてしまいました。
高給取りがこんだけ集まって、ダラダラと会議して…。
どんだけお金がかかってる会議なんだコレ。
超高額なムダ会議
例のお偉いさんが「うーんでもなぁ」「やっぱり資料作り直そうか」などと言いながら、たっぷり時間をかける。
そのくせ、まったく物事を決断しようとしない。
ドイツ人従業員はみんなとっくに帰宅して、日本人だけが残ったオフィスで延々とムダ会議。
他にやる事あるはずなのに
上司の言葉を聞き流しながら、「なぜドイツでもこの状況が生まれるのか!?」真剣に考えてみた。
まず、ドイツ人はムダ会議には付き合いません。
ドイツ人には「みんなやっているから」「決まりだから」などの理由で会議に参加する集団意識や従順さが無い。
ましてや、「上司が残業しているから」というような年功序列の考え方も無い。
なるほど
要するに…。
- ドイツ人とは定時後に会議が設定できない
- 打ち合わせの言語が英語になるという『言葉の壁』もある
- 駐在員はみんな『残業慣れ』しているから拘束しやすい
- 結果: 日本人だけで集まって会議をする
…そのような残念な構図が見えて来たのです。
しかも、会議では決まって『偉い人』が先導して遅くまで時間を浪費する。他の駐在員には指摘しづらい雰囲気がある。
キツイ…
みんなそれぞれ仕事があるはずなのに、この残業確定の長時間会議に参加させられます。
このような働き方は、日本で会社員をしていた当時に何度も経験したやつ。
デジャビュ?
海外でもしっかり『日本式』を実行する駐在員上司。
ドイツハーフは、海外拠点のドイツオフィスでも消耗することになりました。
ドイツ人の働き方
現地スタッフとドイツ語でコミュニケーションができる事もあり、駐在員の中でも自分は『特別な立ち位置』にいました。
日本人に囲まれて仕事をする事も多いけれど、ドイツ人の信頼を勝ち取ることでビジネスに上手に携わることもできた。
色々な働き方を経験した
ドイツ人の同僚も、次第に本心で語ってくれるようになりました。
「お前昨日も残業してただろ? また例の『日本人会議』か…」
「日本人は休日にも仕事をして…クレイジーだよ」
そのように言ってくれるドイツ人。彼らに囲まれていると、自分が駐在員だという事を忘れそうになる。
ドイツ人と仲良くなるにつれてドイツハーフの中には一定の意識が芽生え、『日本離れ』が加速しました。それがダメな事だとわかっていても。
その1番の原因が、赴任先で経験したドイツ人の働き方。
ドイツ人はほぼ残業をせず、仕事が終わればさっさと帰ります。
成果主義の世界なので、上司と合意したターゲットに対して結果を残す事だけに集中して効率良く働きます。日本人駐在員の『事情』などは眼中にない。
そんなドイツ人の働き方は常にワークライフバランス重視でした。
社内の打ち合わせにもコーヒー片手に参加して、若手社員も足を組んでふんぞり返りながらコーヒーをすすっている。
余裕のあらわれ
これも成果主義の賜物で、仕事の結果さえ出せていれば誰も会社での『働き方』に対しては口を出さない。何をするにも全て自己責任なのです。
また、年功序列の賃金体系が無いため、ドイツ人は各々に定められたタスクに対して結果を出す事に特化して働きます。他人の足を引っ張るような同調圧力は、当然ありません。
ドイツにムダ残業やムダ会議が少ないのは、そのためです。
個人主義とも言える
そして、みんな朝早めに出社して午後4時くらいには帰宅する。
このような環境で、ドイツ人と日本人の間で働くドイツハーフ。
自分の中には「グローバルに活躍したい!」という目標がある。今回の駐在をキッカケに、企業の海外ビジネスの促進に携わるつもりでした。
やる気はある
慣れ親しんだドイツで働くことに対して抵抗はなかったし、取引先とのやり取りも実際にスムーズでした。
これまでの集大成のような形で、自分の語学力と日本での経験が最大限にいかされているという自覚もあった。
しかし…。
日々の業務の中では『パラレルな環境』が出来上がってしまった。日本人とドイツ人の間で板挟みになってしまったのです。
これがツライ…
自分の仕事は、セールスチームの一員としての営業活動、そして計画策定や戦略立案などいち営業マンとしての業務です。
しかし、もう一方で日本人を相手にする仕事がある…!
ビジネスとは関係ない、『誰かを満足させる』ためだけの仕事など。
うーん。
ムダ会議は日常茶飯事で、駐在員の下っ端には色々な仕事が降ってきた。
「コレ翻訳してくれ」
「もう一回日本語で説明してくれ」
「(ムダ会議の)議事録はお前が作ってくれ」
このような仕事は、厳密に言えば『ドイツ人上司』に評価されないムダ業務。
しかし、自分は赴任期間が終われば本国へ戻る身。『日本人の評価』が1番大事なはずであり、そのためには駐在員にベットリ付き合うのがベスト。
しかし…。そのような働き方をする気はサラサラありませんでした。
現地で経験したドイツ人の働き方に、もう後戻りができないほど感化されていたからです。
ドイツ駐在員をしていく上で
まず、自分の中でハッキリしました。
日本人上司とはできるだけ距離を置く。本来はダメなのですが…いたし方ない。
自分の仕事であるヨーロッパでの拡販業務には、現地人と密接に働くことが必要不可欠。日本人とばかりつるんでるヒマはない。
マジでない
グローバル企業として本社機能が日本にある以上は、もちろん『日本』が関わる業務を完全い否定する事はできません。
それでも、自分に期待されるタスクの遂行ためには、ドイツ語と英語を駆使して『現地の声』を吸い取ってビジネス促進に反映させる必要がある。
ハーフが会社に就職した意味はそこにあるし、それがいつか必ず結果になって表れる。そう確信していたのです。
しかし…。
実際に仕事をしてみると、グローバル企業であるはずの日本企業のドイツオフィスでは、働き方が完全に二極化していました。
日本人駐在員は「自分は本社の人間!」「ビジネスは我々が進めている!」そのような自負があるらしく、積極的にドイツ人と関わろうとしない。
同時に、ドイツオフィスの外国人は日本人駐在員との『分かり合い』を諦めているフシがある。
実はかなり深刻
駐在先の組織の中の『見えない隔たり』は、なかなか埋まりません。
グローバルな事業のリーダーとして、『グローバル人材』として海外拠点のメンバーを引っ張るのであれば、それぞれの国の文化・風習・働き方や人事制度を理解している必要があります。そのためにまずは自分から変わることも大切。先輩後輩の関係などの『日本の常識』にとらわれない柔軟な思考はマストです。
自分なりに解決策を見出そうともしましたが…諦めました。
日本と同じように毎日残業して、息つく暇もないほど忙しい日々。そのような中で「会社を良くしよう!」という気持ちは簡単にヘシ折られた。
頑張れなかった
赴任先のドイツオフィスで、ワークライフバランスを謳歌していたドイツ人。
いつまでも残業してムダ会議に没頭する日本人を横目に、「バーイ!」と言って定時に帰宅するドイツ人。
彼ら/彼女らと同じ『会社員』なのに、日本人だけが、日本でも海外でも長時間労働をしてストレスまみれで働いている現実。
………。
『ハーフが会社に就職してみた』
この話も、もうすぐおしまいです。
ドイツ駐在員をしていたドイツハーフが…会社を辞めます。
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