このブログを書くキッカケになったお話。全10話のシリーズ記事です。
海外経験豊かなハーフがゴリゴリの日系企業に就職してみた。
第6話です!
第1話はコチラ:
最初は楽しかった営業部での仕事
営業部への転属後は楽しく仕事をしていました。
上司で課長のシノハラさんと一緒に仕事をすることは『学び』も多く、業務に携わって結果を出すことに意義も感じた。
仕事してる感
でも…。
よくよく考えれば、この時の自分は浮かれていた。
(マイナビ, 学生の窓フレッシャーズ, 03.2020)
『チャンスは自分次第』などと言いますが、日本企業は基本的に裁量の大きな仕事を新入りや未経験者に任せません。「ミスされたら面倒」「自分がやった方が早い」と考える上司も多い。
要するに、色々な意味で自分の仕事はまだまだ『これから』だったのです。
それでも、最初の頃はストレスなく働いていました。
正直なところ、ちょっとナメてた。
勘違い?
自分が帰宅した後に、誰かが『本来仕事がするべき仕事』
案の定、このようなお気楽な時間は長くは続きませんでした。
そして、仕事が忙しくなるにつれて…
誰も定時に帰宅しない日本の職場
営業部で1番驚いたのは、定時に誰も帰らないという事。
「お先に失礼しまーす」と言って帰るのは、時短勤務のおばちゃんとか一般職のお姉さんだけ。
みんな残業してる
定時の午後5時半にソワソワし始めるドイツハーフ。でも、周りの人間は微動だにしません。
終業のチャイムがオフィスに鳴り響いても、誰も席を立たない。
職場の『空気』が、定時に帰宅できる雰囲気ではないのです。
会社には毎週『ノー残業デー』がありました。「本日はノー残業デーです。定時に退社しましょう」というアナウンスが流れますが、実際は誰も反応しない。その日は良くても結局別の日に残業するし、持ち帰り残業になるケースもある。社員を強制的に定時帰宅させるだけでは効果は薄いのです
部長も、課長のシノハラさんも、みーんな毎日残業。
たまに早く帰る人がいるかと思ったら、「この後飲み会に誘われてるから…」という理由だったり。
飲み会はほぼ仕事
そのような職場では、仕事を頑張って早く終えても1人だけ帰ると目立つ。
みんなが残業に突入するタイミングで定時帰宅するのは、『悪いこと』のような雰囲気すらあります。
日本企業では一般的に「大きな失敗をしないで息長く同じ会社に居続ける事」が良しとされます。これは終身雇用や年功序列のせいですが、そのおかげで『辛いのはお互い様』という意識が生まれて少数意見が排除される。これが全社員の慢性的な残業につながるケースもあります。
仕事はとっくに終わっているはずなのに、「上司がまだいるから」という理由で机に向かって頑張る人もいます。
無意味な残業
そんなある日のこと。
この日は珍しく、ドイツとの電話会議に参加する日でした。 開始時間は、ドイツ時間の午前11時。日本では夜7時に始まる会議です。
会議が終わったのは夜の8時。この時間には残業している人がまだたくさんいます。上司の課長は、3人とも残業してる。
自分のデスクに戻ると、会議の議事録を書きました。
早く帰りたい
そうと思いながら、パソコンに向かってひたすら打ち込むドイツハーフ。
すると…。
急に後ろから肩をポンッ!と叩かれました。
「頑張ってるなー感心感心~!」
ビクッ!となって振り向くと、そこには「ガハハハッ」と笑いながら話す上機嫌な他部署の上司がいました。
日頃から関わりのある技術部の部長さんです。
「何? 会議だったの? うんうん、ご苦労さんだねぇ~」
そんな事を言いながら、世間話を始めます。
はぁ…
適当に相手をしつつ、その場をやり過ごす。部長さんは上機嫌で去っていきます。
何の事は無い、たった数分間の出来事。
しかし…。
何かとてもつもない違和感を感じました。
この時、自分は褒められたはず。
それなのに、大きな不安を覚えたのです。
残業イコール『頑張っている』!?
その日の帰り道。
通いなれた徒歩での通勤路をトコトコと歩いていました。
珍しく夜の10時をまわっている、都内の薄暗い帰り道。
(頑張ってるなー感心感心!!…)
その言葉に感じた違和感のことを考えながら、テンションもダダ下がりで歩いていました。
その理由は…。
残業 = 頑張っている!
という、会社に蔓延している古い考え方。
それに絶望していたのです。
ため息出る
残業をしていたドイツハーフに「頑張ってるじゃないか!」と声をかけてきた、年配の部長さん。
彼は、あからさまに『残業 』を褒めていた。もっと突っ込んで言えば…。
「いつもは早く帰っちゃうのに、今日は残業して頑張ってるじゃないか!」
そう言っていたのも同然なのです。
(内閣府,「ワーク・ライフ・バランスに関する意識調査」, 03.2020)
若い社員がどれだけ効率よく働こうが、古い社員はおかまいなし。これまで何百、何千時間と残業をしてきた人達は「残業が当たり前」だと思っているのです。
残業している人が「頑張っている人」という、効率を無視した考え方。
いわゆる思考停止
仕事が無い時でさえ、とりあえず残業。そうやって「頑張っている姿勢」を見せることで評価されてきた人が大勢います。
(頑張ってるなー感心感心…!!)
このような言葉を若手にかけることで、残業を良しとする企業文化を次の世代へ引き継ぐのです。
不効率で意味のない仕事に消耗した
営業部は、いわゆる体育会系の部署でした。
みんな元気で、仕事にメリハリがある。
それはとても良い刺激になったけれど、不条理な精神論みたいなモノもありました。
上司の中には、「仕事は見て覚えろ!」とか「新人は下積みが大事だ!」みたいな感じの人もいた。
キツい
そんな環境の中で、部署の中には大小さまざまなルールやマナーが存在していました。
- 残業はエンドレスなのに出社時間には超キビしい
- 職場の飲み会は基本的に参加がマスト
- 下っ端は早めに出社して始業と同時に職場の電気をつける
これらはほんの一部。そして、そのどれもが暗黙のルールみたいで居心地の悪さを感じました。
ビジネスをうまくいかせる為には、仕事に関連する人が快適で円滑に業務をこなす必要があります。
そのためにルールやマナーが必要になるのは、わかります。
しかし…。
当時の職場には意味不明なルールや慣行が多くありました。
面倒くさいやつ
そして、仕事以外のストレスを感じている自分に気づきました。
日本企業は基本的に集団行動です。それを守らないと「自分勝手!」「職場の和を乱してる!」となる。表向きはチームワークでも、効率性や生産性を無視した単なる同調圧力である場合もあります。その結果、職場の常識を『世界の常識』とでも言わんばかりに働く人も出て来ます。
社内には「周囲に不快な思いをさせないようにルールを守ろう!」みたいな雰囲気がいたる所にある。
組織として動くためには、個々がルールを守るのはもちろん大切。けれど、それがちょっと行き過ぎている。
キツイ…
「それがウチのルールだから」という根拠のない理由で継承される意味不明な決まりごともあるのです。
年功序列制度の下層にいる若手には、特に『雑用』などのしわ寄せがたくさん来ます。
それで辞める人も…
日本の社会人経験がなかったドイツハーフは「学ぶことも大事!」と割り切って、とりあえず流されるままに働いてみた。
しかし、仕事が忙しくなるにつれて…だんだん心と身体の余裕が無くなっていったのです。
グローバル企業の中身は『ザ・日本の会社』
営業部では、『法人営業』を実際に担当することが目的でした。
日本の顧客を相手に日本の働き方を経験することが、将来のベース作りになる。
営業マン
担当するのは、ゴリゴリの日系企業。
不安もあるけど文句は言わず、とりあえず業務を請け負ってみる。
業務の引継ぎと並行しながら、お客さんへの『あいさつ回り』がさっそく始まりました。
これまで担当していた同僚に同行して、先方の各部署を訪問します。
営業には新規開拓営業やルート営業などの分類があり、その仕事内容も提案、見積作成、商談など多岐に渡ります。ここまでは海外と同じですが、日本の営業は『何でも屋』になりがち。営業は根本的な問題解決ができない事にも窓口として対応する所は、ドイツなど海外とは異なります。
そうして、取引先のほぼ全部署をまわった。
取引先は伝統的な日本企業という事もあり、どこの誰に会ってもビックリされました。
「へぇー新しい営業さん? よろしくね」 と、気さくに対応してくれる人もいれば。
「えっ…。こちらの方は…。日本語は大丈夫なんです…よね?」 と言って、コダモンと露骨に目を合わせない人も。
見た目外人
まぁ…そりゃそうですよね。相手側からすれば、担当者がいきなりドイツハーフになってしまったわけです。
何はともあれ、引継ぎ作業の中では「これまでと何も変わらないので安心してください」みたいなメッセージを送りました。 引継ぎ自体はスムーズにいったのですが…。
お互いが「ザ・日本の会社」なので、ドイツハーフが絡むことにはどうしても違和感がある。らしい。
そうは言っても、担当者の交代はもう正式に決まったものです。
後戻りはできない。
やるっきゃない
一緒に挨拶回りに付き合ってくれた同僚は、これまでの担当からいったん外れて当面はサポートにまわる。
急に表舞台から消えるわけではないのですが、彼はこれまで取引先とベッタリな関係を構築していたのです。
怪しい意味じゃなく
要するに、彼はズブズブの『日本式』に顧客対応をしていたのです。
日本の営業マンの中には「お客様は神様」「足繁く通えば注文が取れる」と考えて働く人もいます。ビジネスと市場のグローバル化で『競争力』だけが物を言う時代でも、顧客の言う事を聞けば案件が獲得できる…と勘違いするケースも。海外ではなかなか通用しない考え・働き方です。
果たして自分にもそのような働き方できるだろうか。
多分ムリ…
担当する取引先のビジネスは、売り上げ規模はプロジェクト毎にまちまちながら、どれもこれも営業が先頭に立って社内外の調整をしなければいけない大変なもの。
「ここまでやるか!?」と思うほど、営業の業務範囲は多岐にわたるのでした。
…本当にやれる?
しかし…ここで対応を変えたら、「新しい担当になってから対応が悪くなった!」という悪い評価になりかねない。
売り上げに影響がでるような事態になれば、それは自分の評価に直結する。
そのようながんじがらめの状況で、とりあえず『従来の働き方』を踏襲(とうしゅう)することにしました。
とりまやってみた
すると…。自分を取り巻く環境が劇的に変わった。
これが日本の営業マンか…!!
- 各所からいつ何時でもひっきりなしに電話がかかってくる
- 全てのタスクに納期があるのでいくら時間があっても足りない
- 資料を1日に何枚も作成してスタンプラリーをする
- 最低でも週に1回は取引先へ出張
そうやって日本のお客さんを相手にすることに、ドイツハーフはどんどん消耗していくのでした。
続きを読む:
コメント