コダモンです。(@kodamon)
日本企業を4年半で辞めて、ドイツでサラリーマンをしています。
ドイツハーフでもある自分は現在ドイツ企業で営業として働いていますが、これまで『ドイツの働き方』をたくさん経験してきました。
その働き方とは、ワークライフバランスをとても重視する働き方。
ドイツでは残業が基本的に無いし、仕事後の面倒な付き合いも無い。就業時間内にバリバリ働いて、仕事が終わった人からさっさと帰ります。
ほぼ毎日定時帰宅
余暇の時間をとても大切にするドイツ人は、長期休暇もしっかり取得して、定期的にリフレッシュしながらメリハリのある会社員生活を送っています。
そして…。
ドイツ人にとって、休日や休暇中に仕事をすることは『悪』なのです。
ドイツの有給休暇は労働者の『聖域』
日本とドイツで実際に会社員を経験した自分は、その『働く文化の違い』に衝撃を受けました。
日本企業に勤めていた当時、上司に有給休暇を申請したら「何で休むの?」「お前が休んだら誰が仕事をするんだ?」と詰め寄られました。日本では自分の好きなタイミングで休めないし長期休暇を取ると『自分勝手』などと言われる場合もある。コンプライアンスや労働者の権利はないがしろです。
日本企業は、社員を休まず働かせることがとっても得意。
職場の人間は「休んだら周りに迷惑がかかる…」と考えて誰も有給を取ろうとしない。有給休暇の取得は労働者の権利なのに、職場には『休める体制』が敷かれていない。
休みたい時に休めない
日本の職場には、社員や取引先が働いているのに「休暇を取ることはありえない!」という風潮さえあります。
集団的に『休まず働く』という事が徹底されている。有給休暇は労働者の権利なのに、有給取得が悪い事でもあるかのような雰囲気すらあります。
その反面、ドイツの有給休暇は『不可侵』とも言えるほど絶対的なものです。
問答無用で休むドイツ人
ドイツの会社員は上司の顔色を伺うこともせず、周りをまったく気にせず、労働者の当然の権利として休暇申請をします。
社歴や年齢など関係なく、ドイツ企業の社員は与えられた有給休暇を躊躇なく申請・取得する。1年に何回も長期休暇へ出かける人もいます。
ドイツ企業の上司は基本的に部下の有給休暇申請を却下しません。
部下の有給休暇が完全に消化されていないと、年末が近づくにつれて人事部から直接指導が入ることさえある。
ドイツ人が休むことは誰にも邪魔できない、法令遵守を徹底するドイツ企業における『聖域』なのです。
ドイツ企業では『社員が休むこと』が当たり前
ドイツで実際に働いてみたら、有給休暇の取得率は100%でした。
休むことに理由は要らないし、周りを気にする事もない。上司や取引先も、みんな基本的に休みたい時に休みます。
ワークライフバランス
日本では『周りに迷惑をかけないように』休まず働いて会社に貢献するのが良しとされますが、ドイツでは逆に「しっかり休め!」と言われます。
そして…。休暇中のドイツ人は、基本的には音信不通となります。
休日や休暇中は社用ケータイを『電源off』にする人もいる。「休暇中は仕事をしない!」と徹底しているのです。
完全にオフライン
これがドイツでは当たり前なのです。
急な仕事が発生しても、上司がどれだけ困っても、休暇に出かけてしまったドイツ人は「あとは野となれ山となれ」と知らん顔。職場に残された人は、担当者不在で不都合が発生しても何とかその場を乗り切るしかない。場合によっては、取引先を待たせます。
要するに、ドイツの職場は『みんな定期的に休む』のであり、仮にそのせいで業務が滞るような事態が発生してもお互い様なのです。
それで成り立ってる
これが本来あるべき有給休暇の姿であり、ドイツ社会には休暇の取得に対する『一定の理解』があるのです。
そんなドイツですが…。時には例外もあります。
これは、現在勤めている企業でドイツ人が休暇中に仕事をした時の話です。
ドイツ人が休暇中に仕事をしたらケンカ騒ぎに!?
事の発端は、とあるプロジェクトマネージャーが休暇中に仕事のメールを書いたこと。
そのメールの存在を知ったおばちゃん社員が、休暇に出かけたプロジェクトマネージャーの上司に詰め寄ったのです。
「あんた、○○ (プロジェクトマネージャー) が休暇中なのに仕事のメールを書いたの知っているの? かわいそうに、そこから取引先から返信がたくさん入っちゃって…。彼、ただでさえ毎日忙しいのに、これじゃ全然休めないじゃない!」
このおばちゃん社員は、プロジェクトに関わる一員なのでチーム内の状況に詳しい。毎日忙しく働くプロジェクトマネージャーの、せっかくの休暇をかばっているのです。
すると、怪訝(けげん)そうな表情で上司が反論します。
「それは○○の責任だろう。自分のプロジェクトのスケジュール、進捗具合、顧客状況などをしっかり理解して『忙しくなるかどうか』を事前にクリアにしてから休暇に行くべきだったのだ」
そのように淡々と答えるベテラン社員の上司。落ち着き払った態度です。
「でも、彼は『休暇中』なのよ!? 休暇を取るのが事前にわかっていたら、そのサポート体制を敷くのがあなたの役目でしょう?」
少し感情的に畳み掛けるおばちゃん社員。
彼女は、『有給休暇』という絶対的な権利を行使しているにも関わらず仕事をするハメになったプロジェクトマネージャーに同情しているのです。
彼女の語気が強まると同時に、相手のベテラン上司も強めに反撃に出ます。
「○○が担当するプロジェクトは過渡期で、この大事な時期を乗り切れるように配慮すべきだったんだ!」
「○○はそれを知っていながら休暇に入った! これは責任の問題で、休暇に行くと事前にわかっていたんだから、それまでに片付けるべきだった。それだけのことだ!」
「それができないまま休みに入ったのだから、休暇中でも対応するのは当然だろう…!?」
一気にまくしたてます。
お互いにヒートアップして…職場がザワザワします。
ベテラン上司の反論に、耳を疑うおばちゃん社員。
「あなたが承認した休暇でしょう!? ありえないわ…」
「理解できない」そう言わんばかりに首を横に振ります。
するとすかさず、その隣にいた別の社員がおばちゃんに加勢します。
「休暇は休暇だろ? 仕事の進捗具合がどうであれ、○○が休暇中である以上は仕事をさせてはダメだ…」
周囲を巻き込む議論に発展したこの会話は、圧倒的に「ちゃんと休ませろ!」という意見が多かったです。
冒頭でも触れましたが、ドイツ人にとって有給休暇は『聖域』。
ドイツでは『責任論』などで休暇中の社員に仕事をさせるのはNGです。
社員が休暇中であれば、そこにどんな背景や理由があるにせよ、仕事をさせてはいけない。
それでも、このカタブツ上司は譲りません。
「○○は担当する案件に優先順位をつけて、課題をクリアにしてから休暇に行くべきだった。担当者として当然だろう!?」
「ある一定のポジションからは責任を伴うようになるんだ…!」
その後もドイツ人同士の議論はヒートアップしましたが、最後まで水掛け論となり、お互いが譲らないままケンカ別れになりました。
『社員が休暇中に仕事した』たったそれだけの理由で、ドイツの職場では言い争いが発生して職場がザワついた。
休日に働くことを看過すれば『明日は我が身』になってしまうかもしれない。その危険性を感じ取ったドイツ人が行動に起こした結果が、今回の論争なのです。
休暇中に仕事をすることは『悪』である
自分の目の前で繰り広げられた議論は、とても興味深かったです。
休暇に出かけたプロマネの上司が言っていた『責任論』は、圧倒的な少数派。これは、ワークライフバランスを重んじるドイツならではです。
休暇は休むためにある
ちなみにですが、このような議論が発生したのは海外特有のフラットな人間関係のおかげです。
いずれにせよ、この一連の騒動は、ドイツ人の働く文化とメンタリティーを非常に良く体現してくれました。
ワークライフバランスを重んじるドイツ人からすれば、休暇中にメールを書いて仕事をするのは『ありえない』のです。
そして、それはケンカ腰になって議論するほど大事なテーマ。
まさに聖域
有給休暇の本来の使用目的は『リフレッシュすること』にあります。毎日忙しい日々を送る会社員が、バカンスに出かけたり家族とまったり過ごす事で、定期的にストレスを緩和すること。
これがしっかり実践できないと、ストレスだけが蓄積されて最終的に心身に支障をきたす事があるかもしれません。
ドイツでも日本でも、休暇中に仕事をすることは『悪』です。
有給休暇は労働者の当然の権利であり、その取得に理由は必要なく、休暇中はリフレッシュに専念する。そうやってメリハリのある働き方をすること。
それが会社員
そうすることで、持続的に健全な会社員生活がまっとうできる。
休日や休暇中に仕事をしてメールを書く働き方は、続ければ続けるほど仕事とストレスが増える負の連鎖です。
ワークライフバランスのある働き方をするために、休む時はしっかり休むことが大切なのです。
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