このブログを書くキッカケになったお話。全10話のシリーズ記事です。
海外経験豊かなハーフがゴリゴリの日系企業に就職してみた。
第7話です!
第1話はコチラ:
家族よりも自分の時間よりも『仕事優先』の会社員
国内の取引先の担当業務を引き継いでいた、ある日のこと。
その日は、これまでの担当者と一緒に客先を訪問して珍しく『社用車』で出張していました。
いつもは新幹線
「たまには」という事で、車で移動をしたその日の帰り道の…。
高速を下りて、都内の渋滞にハマっていた時のことです。
既に夜8時をまわっていて、社用車を会社に戻す頃はおそらく9時過ぎ。そんな状況でした。
「ふぅー…。今日は移動が多かったから疲れたなぁ」
助手席に座る上司が、つぶやくように言いました。
運転席に座っていたコダモンは適当に相槌を打ちつつ、既に暗くなった外の景色を眺めながら…。
早く帰りてぇ
そう思っていました。
渋滞にハマっている事にもイラついたけど、ズルズルと長引いた出張にもため息が出た。
すると、その上司がこう続けたのです…。
「会社に戻ったら仕事するかぁ…。こんな時間に帰ってもやる事ないしなぁ」
…ファ!?
ドイツハーフは愕然としました。
車を会社に戻す頃は夜の9時過ぎです。それなのに、「まだ仕事をする」という発言。
しかも…。
家に帰れば妻子が待っているのに、「帰ってもやることがない」という発言。
マジでひいた
働き方ヒント!
欧米諸国は成果主義なので社員に求められるスキルレベルが高く、能力のある者だけが昇進できます。そのようなバリバリの仕事環境でも、欧米人は『家族』や『余暇』を大切にします。会社や部署に対する帰属意識も薄く、プライベートの充実のためにお金を稼ぐと割り切っている。効率良く働く事だけを意識します。
家に帰って家族と過ごす時間よりも、自分の趣味の時間よりも『仕事優先』。
もう夜の9時なのに、「こんなに早い時間」と言って働こうとする上司。早く帰っても家でやることがないからという理由で会社に残る人。
その人生は「仕事のため?」「会社のため?」
ちょっと理解できない
この時は、驚きを通り越して悲しい気持ちになりました。
生きていくために『お金』は必要です。生活のために会社員という道を選ぶ人は大勢います。『給料』のために働くこと…ここまでは理解できます。
しかし…。
日本企業には終身雇用の名残があり、同じ会社に一生涯勤めようとする人が大勢いる。仕事がどんなに辛くても、上司がどんなに理不尽でも、いつまでも机にかじりついて仕事をする。
そうやって身を粉にして稼いだ『お金』は、本来家族と自分の幸せのために使うもの。
それなのに…。
本当に大切にするべき人・モノをないがしろにして働いている!
完全に矛盾しています。思考停止で働き続けた結果がコレなのか…。
むなしい
「それが社会人だ!」「仕事だからしょうがない!」そのような声が聞こえてきそうですが、家族の存在や自分の健康を顧みずに働くことは間違っています。
ドイツハーフは「そんな人生は絶対にイヤ!」と心に誓いました。
営業の仕事で試される
コダモンが担当することになった取引先。その前任者は、とにかく毎日残業していました。
お客サマにベッタリで仕事に尽くしてきたので、先方からすれば『いたれりつくせり』の状況。
むむむ
いつ何時ケータイに電話がかかって来てもピックアップするし、何かあればすぐにすっ飛んでいく。日本では『当たり前』の営業対応で、まさにお客様は神様という状態。
そのような仕事を引き継いだドイツハーフは、まず試されることになりました。
上司のシノハラさんやハトリさんから、『日本の取引先相手にうまくやれるか』を見られている。
みんな口には出さなかったけれど、週一の『朝会』では仕事の進捗状況を根掘り葉掘り聞かれる。
そして…。
案の定、すぐに心を折られることになりました。
どう頑張っても避けられない残業事情
日本でサラリーマンをして、『激務』だといわれる法人営業をやってみた結論。
日本では残業が不可避!
そう理解しました。そして、その1番の理由は:
上司も取引先もみんな残業しているから!
営業部に配属になったばかりの当時は『仕事を断っていいかどうか』もわからずに、毎日たくさん残業していました。
今だったら絶対やらない
要するに、『お客サマ』が定時後に働いているうちは、下請けなどのサービスを提供する側は絶対に帰れない。(という風潮がある)
それでも、海外経験の長かったコダモンは、忙しくなりつつも深夜まで残業するような働き方はしませんでした。
しかし…。
そうやって働いていると、その『しわ寄せ』が部署内の誰かにいく。
これは、とある日の出来事です。
その日は、何十本も電話対応をして、何十通ものメールを送り、合間合間には会議もはさまれる…というような激務の日でした。
それでも、夜8時頃には仕事が落ち着いたのでさっさと帰宅。
次の日…。
「おはようございマース」と颯爽と出勤すると、いつもは反応の良い上司のハトリさんが明らかにふてくされてる。
あいさつも返してくれない。
何かあったのかな?
ちょっと気になったけれど、いったんスルー。
すると…始業チャイムと同時に、ハトリさんが「コダモン、ちょっと」とドイツハーフを呼び出しました。
そして、そこから説教が始まったのです。
「お前が昨日帰った後に、例のお客さんから急ぎの依頼があったぞ? 何とかデータを漁って俺が対応しておいたけどな…」
ちょっとキレ気味に、不満タラタラ。
どうやら、自分は「仕事は終わった!」と思って帰宅したけど、取引先は昨日のうちに進めたい案件があったらしい。
え…
メールボックスを見返しても、それらしき痕跡は見当たらない。
お客さんは「コダモンがつかまらない」と言って、上司のハトリさんに直接電話してきたのです。夜8時以降に。
その結果、ドイツハーフが帰宅した後にハトリさんが『仕事を肩代わり』することになった。上司にしわ寄せがいったのです。
「お前…。自分が担当者だという意識が足りないぞ?」
説教の続けざまに、そんな事も言われてしまった。
……。
この日の出来事は、コダモンの中で緊急アラームを鳴らしました。
ハトリさんに怒られたからではありません。上司の自分に対する評価が下がったから…という心配でもない。
とてつもない危機感に見舞われた理由。それは…。
この仕事には必ず『残業』がついてまわるのだ…!
その事実を、社会人生活の『現実問題』として認識したからです。
日本企業には「取引先の事情が最優先!」「お客さんの言うことは絶対!」という風潮があります。その傾向は古い社員に特に多く、顧客の希望に応えるためには残業も休日出勤も惜しまない。そのような働き方が『当たり前』であるため長時間労働がなくならず、上司は部下にも同様の顧客対応を求めます。
当時は経験も浅く、あくまで『将来ドイツで働くための準備』として日本顧客を担当していたので、仕事をコントロールする術がなかった。
言われるがまま
夜8時をまわっても当然のように働いている『お客さん』。彼らは、取引相手にも同じ働き方を期待します。
そして…。そのような期待に問答無用で応えようとする日本企業。
結果的に、みんないつまでも残業をしているのです。
(厚生労働省,我が国における時間外労働の現状,03.2020)
この日を境に、一気にストレスが押し寄せてきました。
『自己犠牲』の精神で会社員をする辛さ
ドイツハーフはもう既にお腹いっぱいになりそうでした。
営業部に配属となってから1年ちょい。その短期間の間に、自分でも驚くほど消耗した。
普通の仕事なのに
ストレス大国ニッポンのサラリーマンを、身をもって経験してみた。その結果、ワークライフバランスの無い働き方が自分の生活を支配していたのです。
- 残業ばかりで『自分の時間』が持てない
- 帰宅したら疲れて寝るだけ
- 休日にも仕事の事を考えてしまう
- 日曜日の夕方になると憂鬱な気分になる
- 月曜日の朝が1番気が重い
『ワーク』が『ライフ』を食いつぶして、ストレスで自分を見失いそうになりました。
社畜ときどきハーフ
世の中には、自分が経験した何百倍もの過酷な状況、または理不尽な環境で働いている人が大勢います。
当時勤めていた日本企業はブラックでは無かったし、悪質なパワハラ上司もいなかった。
夜8時に帰宅できている時点で、「文句言うな!」「当然だ!」とツッコミたい人もいるでしょう。
それでも…。ドイツハーフはもう限界でした。
もういいや
「モノは試しだ!」という勢いで入社してみた、日本の大手企業。
グローバルな人間になるという目標は未達成だけど…もうさすがに疲れた。
海外生活が長かった自分は、日本のサラリーマンになりきれなかった。ここまで働いてみて、それをしっかり確認できた。
日本で日本人として働くこと。それは、自分の想像をはるかに超えた『自己犠牲』が必要とされるものでした。
上司のハトリさんも、尊敬するシノハラさんも。
みんなとてもいい人なのだけれど、そこにはとてつもない『自己犠牲』がありました。
- 家族と過ごす時間を犠牲にする長時間労働
- 余暇や自分の趣味の時間を犠牲にする仕事の付き合い
- 自分の健康すらも犠牲にしかねないストレスや悩み
このような会社員生活を続けるのは無理でした。
忍耐の精神が足りない?
めまぐるしく働く日本の会社員の中には、かわいそうなくらいに会社や仕事に人生を搾取されている人もいる。
ワークライフバランスは完全に崩壊しています。
ドイツハーフは、白旗をあげる一歩手前でした。
会社を辞めようと思ってたら…
忙しい毎日の中で「より良いサービスを提供しよう!」などのポジティブな考えは、微塵も生まれませんでした。
仕事に対する『やりがい』も感じられない。
単純に、そこに存在している仕事を一つ…また一つと順々にこなすだけ。
ゾンビみたい
自分が意識していなくても、「仕事をさせられている」という負の感覚が芽生えていました。良くない事です。
営業部に配属になった当時はイキイキしていたドイツハーフは、日を追うごとにゲンナリしていった。営業部の『朝会』で業務報告をする自分には、余裕のなさが見て取れた。
そんな矢先です…。
最終的には「ドイツで仕事をしてもらう」という、入社当初からのキャリアパス。
営業部で下積みをしてからドイツに駐在するという、役員も期待していた『ドイツハーフの使い方』。
その話が、急に空から降ってきたのです。
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