このブログを書くキッカケになったお話。全10話のシリーズ記事です。
海外経験豊かなハーフがゴリゴリの日系企業に就職してみた。
第2話です!
第1話から読む:
ドキドキな入社初日
海外生活が長く、4ヵ国語がしゃべれるハーフとして、鳴り物入りで日本の会社へ入社する事となったコダモン。
スーツもカバンも新調して、準備は万端。
家具もロクに揃っていないスカスカの部屋から、『日本の社会人』としての生活がスタートします。
ニ○リ行かなきゃ
会社まではおよそ徒歩25分の道のり。地下鉄を2駅分ほど歩く距離です。
土地勘はまだ全然ないけれど、覚えたばかりの道をトコトコ歩く。
天気は快晴!
お世辞にもおいしいとは言えない都会の空気を大きく吸い込みながら、会社へ向かいます。
オフィスビルが建ち並ぶエリアを通りながら、たくさんのサラリーマンの『諸先輩方』とすれ違う。
スーツの波
つい数週間前までドイツで“のほほん”と暮らしていたのに、今はスーツを着て日本の会社に向かっている自分がいる。
不安と期待の入り混じった、なんとも言えない気持ちになります。
ちなみに、入社日となったこの日は4月1日。
入社式がある日だけど、中途採用なので自分は参加しない。ホッとしたような寂しいような…?
入社初日とは言っても、中身は味気ないものでした。所属部署や関係部署で挨拶をしたり、人事部で残りの手続きを一通り行っただけ。
しかし、ドイツの大学を卒業したばかりのハーフには、あらかじめ決まっていたスケジュールがありました。
それはズバリ、新入社員研修に参加すること。
海外が長かったから「一から学び直し」?
さっそく、事前に指定されていた『とある場所』へ足を運びます。
そこは…新入社員研修の研修会場。
本来であれば、中途採用の即戦力ということで、そのまま部署に配属されていたのでしょう。
けれど、帰国子女のドイツハーフには会社側の”はからい”がありました。
面接の時から、会社の人間はしきりにこう言うのです:
「コダモンさんはまだ『日本の会社』での業務経験が無いからねぇ…」
「まぁ、まずは研修に参加して『日本の会社』というものを知ってください」
そんな背景があって、新入社員と一緒に研修を受けることが決まっていました。
会社の人間は、入社前からしきりに『日本の会社』を学ばせようとしていた。
ハーフで海外生活が長いからだろうか。
言い換えれば、「まずコイツを日本式に調教してやろう!」みたいなこと?
外人扱いされてる
日本での社会人経験が無いから、まだ半人前扱いされてるのかもしれない。
まぁでも、今悩んだって仕方ない! なんとかなるだろう。
生まれも育ちも日本だし。
海外が長いとはいっても、思考回路のベースは『日本人』です。いわゆる忍耐力とかもある…はず。
すぐ慣れるっしょ
相変わらずお気楽に考えながら、新人研修に参加することになりました。
新入社員研修に参加してみた!
研修の会場は、100人程度まで入りそうな大きなホールでした。
さすが大手企業。建物とか設備はとっても充実している。
研修会場の入り口には、参加する社員たちの名簿と一緒に、自分の名前が入った名札が置いてありました。
準備がいいなぁ
そんなことをのんきに思いつつ、名札をつけて中に入る。
すると…。そこにはすでに 40名くらいの将来の同期たちが座っていました。
これから数週間の研修を共にする仲間たち。彼ら/彼女らは、どれもちょっと緊張した面持ちです。
そして、そのほとんどが新卒。みんな自分より2〜4歳くらい若いのかな? キラキラの新入社員たちです。
みんなどことなく緊張している様子だけど、エネルギッシュな感じも伝わってくる。
そんなことを感じながら、とりあえず分の席に着席。
すると…。チラチラ見られていることに気づく。
ん…? なんだ?
なんか…とっても視線を感じるんですけど。
まぁ、それもそのはず。
周りからすれば、「は!? 何この外人!?」という状態です。
そりゃそうだよね。自分の見た目は完全に『日本人離れ』しています。
入社式にも参加していなかったし。
そんな得体のしれないハーフが、研修に参加する気マンマンで着席。
ちょっとだけ周りがザワつきます。
でも、それを気にしたって仕方ない。
ハーフとして(日本で)ジロジロ見られるのは昔から慣れてるし、みんな悪気はないわけだしね。
席に座ったところで、あらためて周りの同期たちをグルっと見渡して見る。
両手を律儀に膝の上に乗せて背筋を伸ばして沈黙している人もいれば、隣同士で仲良くなっておしゃべりをしている人もいる。
そんな光景を見ていると、急に色々な感情がわいてきました。
実は…。
これから行われる新入社員研修は、自分にとってどうでもよかったのです。
研修は適当に
そう思っていました。
自分にとって一番の関心事は、この会社。
日本くんだりまでして入社した、この日系の大手企業です。
わずか2週間でドタバタの移住を終えて、とりあえず社会人生活をスタートさせたけれど、これから自分は会社組織の一員。
研修を通してこの会社の事を知って、仕事を通して社会人として日本で暮らしてく。
『日本のサラリーマン』になるための本番は、まだまだ先。
それでも、この研修会場に座った途端になぜか一瞬不安と焦りを覚えた。
この会社で良かった…?
それだけが気がかりたったのです。
『グローバル企業』と名乗っている大きな会社だけれど、その中身は未知数。
自分が納得して入社を決めた会社だけれど、そもそも日本のサラリーマンとしてやっていけるのだろうか?
そんな心配をよそに、新入社員研修が始まります。
自己紹介で注目される
前方に大きなスクリーンと登壇のある研修会場。その横には、既に2人の会社の人間が座っていました。
この人達が人事部の担当者。これからおよそ3週間の研修を先導する人たちです。
既に前の方の席に座っている同期に話しかけたり、ニコニコしながら研修の参加者を見渡している。
研修を先導するのは人事総務部の育成担当となる部署で、所属長と数人から成り立っていました。
研修の専任になる人が1人。そして、そのオブザーバー的な人が1人。
その年に研修担当となったのは、小柄な女性社員。
名前はカナさん。
とても元気な人で、キレイというよりは可愛らしいといった感じ。
すごくハキハキしたしゃべり方をするけど、どこか不自然。新入社員のお手本になろうとしてるのかな…。
「みなさん、おはようございます!」
からの…。
「あれ、声が小さいですね…もう一度。おはようございます!!」
というお決まりのパターンを、さっそくやっています。
そして、まずカナさんの自己紹介がスタート。実年齢は教えてくれなかったけど、どうやら彼女は自分と年が近いらしい。
その後に、他の同期たちが続きます。
「〇〇大学出身です!」「趣味は〇〇です!」
みんな、お手本通りの自己紹介。
カナさんに「もっと元気よく!」とはやし立てられる人もいる。みんな頑張って声をはりながら自己紹介。中にはボケて笑いを誘う人もいます。
そして、自分の番が回ってきた。
…すると、明らかに周りの注目度が変わる。
「この外人、いったい何者…?」
…という、みんなの心の声が聞こえてきます。
それでも、普通に日本語で自己紹介をすると、みんな「なぁーんだ」という感じになる。
豹変し過ぎ
思わず苦笑い。
ドイツから来たこと、ハーフであること、日本語が(第一)母国語であること。そんな情報を交えつつ、自己紹介終わり。
すると、みんな少しホッとした表情になる。カナさんまで…!
思わず中学・高校時代を思い出しました。日本は相変わらずで、みんなまだ外国人(ハーフ)慣れしていない。
日本だなぁ…
しみじみ感じます。
研修の自己紹介を通して、海外と日本の違いを改めて認識。
これまで海外生活が長かったせいもあり、日本がここまでグローバルスタンダードから外れているとは思わなかった。
欧米諸国は多国籍で人種的に区別する排他的な考え方は否定されます。ドイツでは外国人も社会の一部。学校や会社には当たり前のように外国人がいます。逆に日本人は日常から海外に触れる機会が少なく『外国人慣れ』していない人が多く、グローバルビジネスで苦労する理由の1つです。
自己紹介の後は、研修スケジュールの確認。
研修中は見学などの日程もあるけれど、基本的には研修会場での座学がメイン。
会社の紹介とかビジネスユニットに関する”おエライサンのありがたい講義”が続きます。外部から人を呼んで行う研修もあるらしい。
中には「新社会人のビジネスマナー」みたいな研修も…。何コレ。
もろもろ、しめておよそ3週間の日程です。そして、そのほとんどが座学。
ちょっと長くね…?
そんなこんなで、研修が続きます。
新入社員研修は学校の延長?
するとさっそく、ビックリな行事がスタート。
なんと、『班決め』です。
…班決め。コレ、最後にやったのはおそらく中学生の頃。高校生の時は、クラスはもう班ごとに分かれていなかった気がする。
なつかしい
それはともかく、班決めです。
実は、研修の席順は既に決まっていたので、そのまま各席をブロック毎に分けたところが『班』として区分けされていました。
ただっ広い研修場には長机が置かれていて、自分たちは適当に座らされていると思っていたのですが…。
どうやら、人事は緻密な打ち合わせで班を決めていたらしい。
研修ではグループワークもあるので、文系と理系、男女比とかをうまく調整していたのですね。
ムダに細かい調整
1つの班が6~7人で、確か7班くらいまであった気がする。
…と、ここでようやく隣の席の1人と前後に座る2人が同じ班のメンバーだと気づく。
コダモンの5班は、女の子が一人の計6名。
みんな新卒でノリの良い元気な子たち。休み時間になると、「ドイツから来たんですか?」「今何歳なんですかー?」と質問してくれる。
みんな屈託なくて、素直。まだ研修も始まったばかりだけど、班の中はいい雰囲気。
仲良くやれそう
次に行われたのが、『班長決め』です。
班長…!!
マジで懐かしい響き。
小学校の時とか、班長がプリントまとめて回収してたなー…と思い出す。
でも…。ちょっとおかしくないかコレ?
班長決めるって…
さすがにちょっとひいた。
班決めなんて中学生以来だし、しかも『班長決め』までするとは…。
ちょっとやる事が幼稚すぎるだろ。
班とか班長を決める事で、研修の進行とか統率が楽になったりするのかもしれない。それなりの理由があるはずだけれど、ドイツハーフには理解できない。
この時は、さすがに拍子抜けしてしまいました。
しかも、班長に任命されるコダモン。
まぁ…いいよ。一番年上だしね。
やるよ。
この『班』にまつわる行事で、ドイツとの差を痛感しました。
日本は集団行動を美徳として職場でも集団志向が強い。黙ってルールに従って『周りに合わせる事』が良しとされますが、成果主義の欧米人は逆に『個』を尊重します。この意識の違いが海外ビジネスにも反映され、『自分』をグイグイ前面に出すことが苦手な人が損をします。
研修でのこの一連のやり取りは、ドイツだったらまずあり得ない。
日本の学校に戻ったような錯覚を覚えつつ、新入社員研修は続きます。
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